2012年11月10日

ビンゴ!

先日、大学時代のサークルの集まりがあり、恒例のビンゴゲームがあったりした。よくあるパーティービンゴは数字が5×5の升目に書かれており、中央の枡はフリーで最初から穴が開いてたりする。で、次々読み上げられる数字が自分の札に存在していれば穴を開けていき、縦横斜め、いずれかの5枡がそろえばビンゴとなる。

今回も同様なビンゴなのだが、ちょっとした新機軸な仕掛けがあった。数字の書かれたシールが3枚同時に配られて、既成のビンゴカード上の数字を上書きできるのだ。だから、たとえば中央横の行が「1、2、フリー、4、5」だったとしよう。ここで、仮に3枚のシールに1と5があったとすれば、それぞれ2、4の上に貼って(上書きして)、その行を「1、上書き1、フリー、上書き5、5」と変更できるのだ。これで最初に1が出た日には、いきなりリーチ(5待ち)となる。

珍しがって貼っていたのだが、敢えて貼らない友人がいて、彼曰く「上書きした数字(上の例では1と5)が出れば確かに有利だが、上書きされた数字(上の例では2と4)のチャンスを失うわけだから、別にお得じゃない」。なるほど、それはそうだ…と言うわけでちょっと考えて見ると、極端な話、同じ数字のシール(たとえば1)が24枚配られて全部貼ってしまった場合、1が出れば全枡開くが、それ以外の数字だと何も出来ないということで、ゲーム性は乏しくなりそうだ。

で、そもそもビンゴの確率ってどれくらいだ?と思って(ちゃんと考える前に)Googleしてみたら、案の定ネット上でいろいろ分析されていた(調べている過程で知ったのだが、最大の数字は99じゃなくて75が普通らしい)。
場合に分けて細かくやっているのが

ビンゴゲームについて

漸化式でスマートに解いてるのが

ビンゴゲームの確率計算

二つの計算結果は若干違うし、時間なくて検証してないけれど、まあ少なくともおおざっぱには正しいのだろう。これによると、引いた数が30回台半ばくらいまでに約3分の1の人がビンゴになるようだ。感覚的にはそんなもの?

さて、ここで最初に戻って考えられる問題:
『5×5の升目、中央はフリーのよくあるビンゴで、1〜75までの数字が書かれている。このうち、3つの数字を、別の3種類の数字に置き換えたとき、ビンゴの確率はどう変化するか。また、この結果を一般化せよ』
数学愛好家の皆さん、解答募集しています。
posted by としゆき at 09:40| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月03日

アームストロング

先日、8月25日、ニール・アームストロングが82歳で亡くなった。言わずと知れた、月面着陸を成し遂げたアポロ11号船長であり、人類で初めて月面を歩いた"ファースト・マン"だ。以前から読みたかったが後回しになっていた彼の伝記、『ファースト・マン』をアマゾンで注文。配送はしばらく先になりそうだが、彼(と彼のチーム)の偉大な業績を振り返りながら、ゆっくりと読んでみたい。

ところで、ネット上の記事で見つけたのが下記のリンク。

http://www.panoramas.dk/moon/apollo11/embed650.html

その記事によると、

----------引用開始----------
アポロ11号のニール・アームストロング船長が月面で撮影した画像をつなぎ合わせた、双方向パノラマ写真が作成された。カメラを左右に動かせるほか、ズームもできる。

これまでに12人が月の上を歩いているが、「月面を歩いた最初の人物」になれたのは1人だけだ。8月25日(米国時間)に亡くなったニール・アームストロングは、1969年に月面に着陸。同僚の宇宙飛行士バズ・オルドリンとともに歴史に残る偉業を達成し、着陸地点の詳細な写真を撮影した。

このパノラマ作品は、アポロ11号の着陸地点に連れて行ってくれるだけでなく、アームストロング船長がそこで目にしたものを見せてくれる。同氏自身が撮影した写真をつなぎ合わせた完全な360度の眺めには、月着陸船が着陸した平らで火山のような月面が写っている。風景の好きな部分でカメラを左右に動かしたり、ズームしたりしてコントロールできる。後ろではオルドリン飛行士が、地震計測機などのパッケージ(EASEP)の機材を降ろしている。

(中略)

画像をこのようにつなぎ合わせることは、アポロの時代にはまだ考案されていなかったため、このパノラマができたのは驚きだとニーベリ氏は話している。さらに、これら一連の写真を撮影するためにアームストロング船長が使ったハッセルブラッドのカメラには、覗き込むためのファインダーがなかった。宇宙飛行士が全体の風景を撮影するためには、カメラを胸に固定し、ひたすら正確な足取りで動き回るようにしなければならなかった。
----------引用終了----------

確かに月面に自分が立っているような錯覚に襲われるこのパノラマ写真、部屋を暗くして、はるか月面に思いをはせながら、彼の冥福を祈ることにしよう。
posted by としゆき at 23:23| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月08日

エルデシュ数

ポール・エルデシュと言う、ちょっと変わった数学者がいた。『放浪の天才数学者エルデシュ』によると、一日19時間も数学の事ばかり考えていたり、知り合いの家を泊まり歩いては数学の問題ばかり解いていたり、天才と何とかは紙一重…と言うのがぴったりな人だったらしい。

そんなエルデシュは生涯に1500本以上もの論文を書いており、冗談半分で「エルデシュ数」と言うものが定義された。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%B7%E3%83%A5%E6%95%B0

『エルデシュ自身はエルデシュ数 0 を持つただひとりの人物とされ、エルデシュ数が n の者と共著で論文を書いた者にはエルデシュ数 n + 1 が与えられる』。つまり、論文多産なエルデシュからの「距離」を示す指標だ。数学科の後輩に聞いてみると、彼はエルデシュ数4だと言う。

上のWikipediaにもある通り、数学界以外でもエルデシュ数を持つ人は多い。面白そうなので調べてみたら、このページによると、物理学者ではスティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)がエルデシュ数4を持つらしい。大学院時代の先輩に聞いてみると、

ホーキング(4)→UCバークレーの某教授(5)→僕の物理学科の同期(6)→その指導教官(7)→僕(8)

と辿れると言うことなので、とりあえず僕もエルデシュ数8までは確認出来た。僕が学生時代に書いた論文は全部同じ共著だったから、多分これ以上は小さくならないだろう(共著の彼らにホーキングからショートカットがあれば別だけれど)。

その話を件の数学科出身の後輩にしたところ、「じゃあ、いつか私と一緒に何かを書いて、アラーキーとお同じにしましょう」と来た。上のページにもある通り、秋山仁→佐高信→荒木経惟で、エルデシュ数4らしい。と言うわけで、数学界最多論文数を誇る天才エルデシュには、僕よりもアラーキーの方が近いのだった(もっと言うと佐高信の方が近いってのも何だが)。
posted by としゆき at 21:30| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月05日

宇宙から朝帰り

日本人二人目の女性宇宙飛行士、山崎直子さんが本日スペースシャトル・ディスカバリーで宇宙へ飛び立った。

彼女は1999年、古川聡・星出彰彦両氏と合わせて宇宙飛行士候補者に選抜される。今でも鮮明に覚えているのだが、当時フジテレビ系「めざましテレビ」に3人で出演し、宇宙飛行士に選ばれての抱負などを語るシーンで、日本初の女性宇宙飛行士である向井千秋さんに対してあからさまなライバル意識を見せいた。

向井さんが、「宙返り 何度も出来る 無重力」という句を読んだのは有名だが、彼女はそこに「私も出来るよ 朝帰りなら」と続けて見せた。大塚キャスター達の突っ込みにも動じず、パッと見の第一印象は「美人宇宙飛行士」というものだっただけに、その強い対抗意識が意外でもあり、頼もしくもあり、とても印象に残っている。

彼女は一時期僕も憧れた、東大航空宇宙工学科卒業(彼女が卒業した93年に改組されているから、当時は航空学科?)。その後、航空宇宙工学専攻の修士となり、宇宙開発事業団(現JAXA)へと入る。経歴だけ見ると、バリバリのキャリア・アストロノート候補生であり、先輩とはいえ医学部出身の医師であった向井さんに対抗意識を持つのも分かる気がする(?)。

年月を経て、角も取れ、いいママさん飛行士となった彼女の宇宙での活躍に期待。順調に行けば米東部時間で18日に「朝帰り」予定。
posted by としゆき at 20:46| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月11日

熱とエントロピー

山本義隆「熱学思想の史的展開」(ちくま学芸文庫、三分冊)を読んだ。山本義隆といえば、泣く子も黙る元東大全共闘代表。素粒子物理を専攻し、将来を嘱望されながら学生運動に身を投じ…という伝説だけは有名で、現在は駿台予備校の講師として知られる。科学史研究でも知られ、本当は彼の別の著書、「磁力と重力の発見」を読みたくて、確か以前研究室時代の後輩が読んだとか言ってたような…と思って聞いてみたら、彼が読んだのはこの「熱学思想〜」の方だった。で、偶然にも文庫化されるという事だったので、これを機会に読んでみたのだった。

副題が「熱とエントロピー」、単行本は1987年に刊行されており、著書が元全共闘…とくれば、また鼻につくようなエコ礼賛本かと言う偏見もあってなかなか手が出ない部分もあったのだが、読んでみて全くの誤解だと言う事が分かった。題名の通り、「熱」と言うものに対する歴史をガリレオによる温度計発明から説き起こし、紆余曲折を経ながらも「熱力学」完成へと至る物語は、読み応えたっぷりだ。

文庫第1巻は最初期の「熱学思想」が語られており、現代熱力学を学んだ僕達から見ると逆に読みにくい。読んでいても、自分が分かっていないのか、当時の人達の誤解(?)なのかが混乱してしまう。熱そのものを物質と考える「熱素」の考え方がいかに生まれ、いかに強固に科学者達の考え方を縛ったかが語られる。

俄然面白くなるのは第2巻から。教科書的には、ラムフォードの実験(大砲の砲身を削る仕事から熱が無限に発生する)により、熱が物質ではない事が分かるとされる。しかし実際には「科学者は摩擦熱というような個別反証例によってはパラダイムを放棄しない。いや旧パラダイムにたいする反証自体が新しいパラダイムを前提としていなければ反証たりえない」。後にジュールによってラムフォードの実験結果が「再解釈」されるのだが、著者がクーンを引きながら言うように、「科学者が自然を以前と違った見方で見られるようになるまでは、新しい事実はまだ科学的事実ではまったくない」のだ。

ある実験事実があったとき、その実験が既存の理論モデルに一見適合しないように見えても、そのことだけを持って理論が置き換えられるわけではない。場合によっては理論が融通無碍に新しい実験事実を包含してしまう事すらある。エネルギー保存則が成り立たないように見える実験結果が得られたとしても、エネルギーの概念を拡張したり、保存則を成り立たせるために、それ以外には存在の証拠すらない新粒子を考案したり。「科学」と言うものの「泥臭さ」が良く分かる。教科書的に完成された理論だけ学んでいると、この辺りのダイナミズムがなかなか感じられない。科学史を学ぶ一つの利点はそこにある。

ジュール、カルノー、トムソン(ケルビン卿)ら、熱力学の英雄達が登場する第2巻後半から第3巻も面白い。熱力学の基礎を完成させた天才カルノーですら思い込んでいた熱量の保存、実際には熱量は保存せず、従って状態量ではない。熱力学第2法則から、もっと自然な物理量としてエントロピーが導入される。ちなみに「熱力学第2法則」は、簡単に言えば熱を100%の効率で仕事に変えることは出来ないと言う事。あるいは、摩擦熱が発生する過程は非可逆だ、と言ってもいい。

「乱雑さの度合い」等と言われるエントロピーは、巨視的な熱現象を、微視的な分子運動論や量子力学的な観点から定式化する「統計力学」でもっとはっきりと定義されるが、残念ながら本書は熱力学までで筆を置いている。この本を読んでみて、以前学んだ熱力学関係の教科書をパラパラと眺めてみたが、以前よりも生き生きと理解できた気がする。著者が前書きで述べている「思想史の書ではあるが、熱学の教科書としても読むに堪える」と言うのは伊達じゃない。

第3巻後半はギブズについて触れられる。理科系の学生が『熱力学の教科書を読むと、「熱力学ポテンシャル」という諸関数の天下り的な導入とそれらの微係数の洪水にうんざりさせられる』(その通り!)。エンタルピーH=U+PVだの、ヘルムホルツの自由エネルギーF=U-TSだの、ギブズの自由エネルギーG=U+PV-TSだのが、内部エネルギーUから「ルジャンドル変換で天下りに導入され、そのため初学者にははなはだ馴染みにくい概念になっている」。ところが本書で(そしてギブズの原論文で)述べられているように、これらには大変分かりやすい幾何学的解釈が存在する(というよりも、ギブズは恐らくこうした幾何学的表現から、発見法的に熱力学ポテンシャルに至った)。

また、熱力学といえば圧力〜体積の関係を表す「P-V図」だが(高校物理でも登場)、むしろ温度〜エントロピーのT-S図、あるいは体積〜エントロピーのV-S図の方が有用な場合もある、という指摘は目からうろこ。ギブズの幾何学的表現といい、何故熱力学の教科書でもっと大々的に扱わないのか(それとも僕が不勉強なだけ?)。ギブズは言う…

その存在がほかならぬ熱力学第2法則にもとづくところのエントロピー概念を(座標に)使用する方法は、たしかに、あまりにも高踏的に思われ、分かりにくく理解が困難なため初心者を遠ざけることになるかもしれない。思うに、この不都合は第2法則の重要性を浮き彫りにし、それに明晰でしかも初等的な表現を与えるという利点によって、埋め合わされおつりがくるであろう…。

科学と科学史に興味がある人には是非読んでほしい。願わくは「磁力と重力の発見」も早く文庫化されんことを。
posted by としゆき at 21:27| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月08日

君もガリレオ

大学院時代の恩師の定年退任記念祝賀会…と言う事でホテルオークラへ。タクシーを玄関につけると、何故か知らないがホテルのスタッフがぞろぞろ控えてるは、カメラを構えたテレビのクルーがいるは、いくら退任記念とは言え、大袈裟すぎないか?と思ったら、隣の部屋では「鳩山一郎50年祭」(彼は1959年3月7日死去)が行われていたのであった。

それはともかく、研究室や業界関係者多数の参加で大いに盛り上がった祝賀会だったが、参加記念品として天体望遠鏡工作キットを頂いた。以前、先生の還暦祝いでは双眼鏡を頂いたが、今度は「土製の輪が見える天体望遠鏡」だった。今年2009年は、ガリレオ・ガリレイが自作の望遠鏡で天体観測を行ってから400年ということで、世界天文年2009として様々な企画が準備されているらしい。世界天文年2009日本委員会では「君もガリレオ」プロジェクトと題して、子供達から観測レポートを募っている。定年退官とはいえ、いつまでたっても宇宙への想いを忘れない先生に素直に感動。

土星の輪や月表面のクレーター等は、自分の目で見た事は一度もないので、実は物凄く楽しみだったりする。この週末、早速木工用ボンドを買ってきて組み立ててみるとしよう。
posted by としゆき at 11:46| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月14日

科学オンチ

シェーバーを買いに行ったある日のビッグカメラでの会話。

「こちらのドライヤーは、ナノイオンを放出して髪の毛がすぐに乾きます。マイナスイオンよりも高機能です」。

「ナノイオン?」

「ええ、ナノイオン。大きさがナノサイズでマイナスイオンより小さいのです。」

「ナノイオンって何のイオンですか?」

「ええ、ですから、ナノイオン」

「…ですから、何の元素ですか?」

「え…それは…」

「…」

松下さん、そういう商売はもうやめましょう。
posted by としゆき at 23:04| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

一家に1枚

科学技術広報財団という財団法人がある。一般には余り知られておらず、僕も存在すら知らなかったが、以前、この財団が「一家に1枚周期表」と銘打って、写真をふんだんに用いたカラフルな元素周期表を作成・配布しているのを知った。早速取り寄せてみたところ、各元素毎に様々な用途を紹介しており、教科書に載っているような無味乾燥な周期表と比べてもずいぶんと「見ごたえ」のあるものだ。

元素周期表

この周期表には、日本人歴代の科学系ノーベル賞受賞者の顔写真も載っている。湯川秀樹、朝永振一郎、江崎玲於奈、福井謙一、利根川進、白川英樹、野依良治、小柴昌俊、田中耕一…と数えてみると、随分と増えてきたなぁという印象がある。もっとも、湯川・朝永・江崎(少し前の日経新聞「私の履歴書」にも登場していた)・小柴くらいなら研究内容も理解できるが、他の分野となるとさすがに素人なのでよく分からない。野依良治が教育再生会議で「学習塾禁止論」をぶったときには、何を寝言を言っているのか、と腹立たしかったのは覚えているのだが。このテーマに関してはまたいつか書いてみたい。

さて、「一家に1枚」はいつの間にかシリーズ化されており、「ヒトゲノムマップ」と「宇宙図」が作成されていたのを知って、早速購入してきた。ゲノム関係も素人同然なのだが、ちょうど福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」を読んだばかりで、生物学に興味が向いている時だったので面白かった。高校時代、少数の原理・原則から演繹していく数学や物理は好きだったのだが、どうしても「博物学」的要素を持ち、ともすれば「暗記科目」にも感じられた化学や生物はとっつきにくかった(この理解が間違っていることは、後に大学に行ってみて実感するのだ)。それでも、物理化学や、分子生物学のような分野は理解しやすいし、福岡伸一の文章は、良質の科学エッセイの持つバランス感覚で、非常に読みやすいものだった。ところで、僕が紀伊国屋書店で購入したものは本人のサイン入りだったのだが、同書中のキーワードでもある「動的平衡」というスタンプまで作成して押印してあるのは、ちょっと…という印象も。

ヒトゲノムマップ

また、「宇宙図」の方は、宇宙誕生→インフレーション→ビッグバン→「宇宙最初の3分間」の元素合成、を経て、現在の姿へをつながっていく宇宙の進化が描かれている。空間的に離れた領域は光速以上の速さで遠ざかるだの、「宇宙の晴れ上がり」によって宇宙マイクロ波背景放射が生まれただの、みんなが疑問を持ちやすく、それなりに間違えやすい、重要なポイントがさらっと書いてある。ということは、「ゲノムマップ」にもきっとそういう重要事項が埋め込まれているのだろうが、残念ながらそれを識別するだけの知識はないのだった。

宇宙図

人々の「科学リテラシー」を磨くためにも、科学技術広報財団には今後もいい仕事をしてもらいたいものだ。
posted by としゆき at 14:10| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月03日

宇宙のしわ

今日はうれしいニュースが飛び込んできた。今年のノーベル物理学賞に、ジョン・マザー、ジョージ・スムート両氏が選ばれた。以前、「インフレーション」でも書いたが、スムートといえばNASAのCOBE衛星で見事に宇宙背景輻射の温度揺らぎを計測してみせた第一人者だ。小柴昌俊・東大名誉教授のニュートリノ研究もそうだが、いよいよ宇宙論・宇宙物理の研究成果が本格的にノーベル賞の対象として土俵に上ってきたのだろうか。とりあえず、スムートの著作「宇宙のしわ」でも再読してみることとしよう。

posted by としゆき at 20:32| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月24日

科学の子

corocket.jpg

青海にある日本科学未来館に行ってきた。日本人初のスペースシャトル飛行士、毛利衛さんが館長を勤め、最新の科学技術を扱う体験型博物館だ。環境技術、情報科学、生命科学等、様々なテーマに分かれた展示が行われている。また、実験や工作などの参加イベントもあり、ホンダのロボット、ASIMOのショーも行われていた。

「地球環境とフロンティア」のコーナーでは、海洋探査船「しんかい6500」の実物大模型(操縦室は思っていたよりずっと小さい!)や、スーパーカミオカンデの模型があったりする。恥ずかしながら宇宙線粒子を捉える霧箱の実物を始めて見た。

毛利さんが館長ということもあってか、宇宙開発のコーナーも充実。ライカ犬以来、宇宙に飛び出した人や動物の顔写真一覧表が掲示され、未来館を訪れた宇宙飛行士達のサインも記入されていた。国際宇宙ステーションにおける宇宙飛行士の個室は、半畳程のスペースで非常に狭いものだ。もっとも、微重力空間では立ったまま(?)の姿勢で壁に固定された寝袋に寝るので、高さがあればそれなりに活用度は高いのかもしれないが。

その他、ロボット、インターネット、コンピュータ、エコ技術などなど、一日見て歩いても飽きない作りになっている。ボランティアのインストラクターも数多く、その場でいろいろと説明を加えてくれるのも親切だ。もっとも、発光ダイオードのコーナーで遊んでいたら、理科系の学生とおぼしき「親切な」インストラクターに捕まってしまい、電子とホールについて延々説明されたのにはちょっと困ってしまった。「電子の動く方向と電流の流れる方向は逆なんですよ!」…。

そうした展示に加えて、何より未来館の「目玉」となっているのは、500万個もの星を映し出すプラネタリウム、メガスターIIを備えたドームシアター・ガイアだろう。全くの個人が開発したメガスターについてはテレビ番組等でも採り上げられてよく知られているが、目にしたのは初めてだった。銀河系の中心方向には星が多数存在することから天の川として観測されるが、メガスターでは本当に星の集まりとして天の川を実現している。暗闇のドーム内で、500万個の星が映し出された瞬間の美しさは、さすがに息を呑むものだった。何の解説も音楽も要らない、このままずっと眺めていたい…そんな気持ちにさせる鮮やかさだ。もっとも上映番組自体も、「見えないものを見る」を主題に、可視光線以外で観測した銀河の様子や、宇宙のダークマターにまで話を進め、たっぷり楽しめる内容だった。

プラネタリウムといえば先週には池袋にあるサンシャインでも見てきたのだが、いわゆる昔風のプラネタリウム(たとえば渋谷の東急にあったような)というよりは、CGを駆使した映像を魅せる…という度合いのほうが強かった。地球の誕生から火星探索までを描いていたが、科学館の方がずっと中身も濃く面白い。

また、科学館のヴァーチャルリアリティーシアターでは、国立天文台監修による4D2Uという番組を見ることも出来た。実際の観測データに基づいて、地球から、太陽系、オールトの雲、マゼラン星雲、アンドロメダ銀河…と、どんどん空間を拡大していく。美しい3D映像の中を、360度回転しつつ、滑らかに移動していく様は、ちょっとした感動物でもある。全天の深度宇宙観測は完了していないから、最大限度まで拡大された宇宙の図は地球を中心にした扇形のスライスでしかなかった。その芸の細かさに、元学生としてはちょっと感心。大々的に宣伝しているわけでもないのに、隠れたところまでレベルの高い内容であることに感動もした。

今回はプラネタリウムがメイン目標だったこともあって、生命科学や環境技術のコーナーは駆け足での見物になってしまったが、また何度も足を運んで、隅から隅まで楽しんでみたい施設だ。週末は18歳以下が無料なのもすばらしい。アメリカ、ワシントンにあるスミソニアンの博物館群を思い出した。全館無料で、最高峰の展示をこれでもか、これでもかと見せ付けるスミソニアン。もちろん、超大国としてのアメリカだからこそなしうるのかもしれないが、せめて科学技術立国を目指す日本も、未来館級の施設をもっと増やせないか…という思いも強くした。

写真は未来館の中にあるレストランで食べたロケット型コロッケ「コロケット」。ニンジンの尾翼を持つスペースシャトル、味覚宇宙での推進力は…まだまだ開発途上!?
posted by としゆき at 14:55| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月27日

インフレーション

今朝の日経新聞「ひと・ピープル」欄に、日本物理学会長の佐藤勝彦教授が登場していた。1980年に彼が最初に提唱した「インフレーション宇宙」モデルは、初期宇宙理論における革新的アイデアだったのだが、「インフレーション」という命名自体は独立に同様な結論に達した別の科学者、アラン・グースによるものだった…という話。分かりやすく、イメージを喚起しやすいネーミングによって、インフレーションといえばグース、と言う風潮が広まった。もっとも、グースの当の論文は、インフレーション宇宙によって、当時謎とされていた初期宇宙理論の多くの問題が解決されることを明確に述べており、名前だけでなく内容も伴ったすばらしい物だったことは言うまでもない(彼自身による「なぜビッグバンは起こったのか」が参考になる)。
簡単にいってしまうと、宇宙は膨張するのに伴ってその中のエネルギー密度が薄まっていき、膨張速度は次第に減速していく(が、膨張から収縮に転じるかどうかは別の議論)。さて、仮に宇宙が膨張してもエネルギー密度が薄まらず一定にとどまるようなことがあればどうなるか?アインシュタインの相対論によってこの問題を解くと、時間とともにどんどん膨張し続ける宇宙という解が得られる。これこそが佐藤先生の提唱した(そして、グースが名付けた)インフレーション宇宙モデルだ。その後、この「密度が一定」という条件がどんな理屈で達成されるのか、という観点から、様々なバリエーションが提案された。また、初期宇宙の高エネルギー密度状態で成立する(と考えられている)素粒子物理学的な視点から、どのようなモデルが整合性があるか、という議論が行われた。
上で述べたように、宇宙が膨張し続けるかどこかで収縮するかは微妙な問題であり、宇宙のエネルギー密度で決定される。ある値以上であれば膨張し続け、以下であればどこかで収縮に転じる。そして観測から現在の宇宙は、何故だかこのギリギリの境界の値に非常に近いことが分かっている。インフレーション宇宙はこのことを非常に簡単に説明できる。では、このことでインフレーション宇宙が証明されたことになるかと言うと議論はむしろ逆で、このギリギリの値を説明する一つの方法として(グースによって)インフレーション宇宙が提案されたのだ。したがって、インフレーション宇宙を「実証」するには別の方法によらなければならない。
実は、宇宙は(インフレーション理論が言うように)非常に一様であるものの、その一方で多くの星や銀河が存在するなど、その密度は完全には均等ではなく揺らぎ(ムラ)が存在している。NASAが打ち上げたCOBE衛星が詳細に計測したその揺らぎは、インフレーション宇宙モデルを強くサポートするものであったのだ(この辺りの議論はCOBE計画に携わったジョージ・スムートによる「宇宙のしわ」に詳しい)。このようにして、現在ではインフレーションという現象は初期宇宙論のコミュニティでは広く理解され、そして支持されるものとなっている。上で述べたように、素粒子物理学や相対論、はたまた観測的宇宙論や天文学とも接点を持ち、非常に多くの研究者の注目を集め、現在でも活発に議論が行われている(そして僕が学生のときにも研究テーマを与えてくれた)。
佐藤先生はイギリスの詩人、ジョン・キーツによる"Beauty is Truth, Truth is Beauty"という言葉を好んでおられる。アインシュタインもこの言葉が気に入っていたようだ。インフレーションは(僕が思うには)最も美しい物理モデルの一つだが、それが果たして真実であるかどうか。今後の研究のさらなる発展を願ってやまない。
posted by としゆき at 23:55| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする