2013年06月10日

ニュースルーム

WoWoWで放映されているドラマ、「ニュースルーム」(原題"The Newsroom")がなかなか面白い。アメリカHBO製作のドラマで、あちらでは昨年から放映が開始され、すでにセカンド・シーズンも放送予定らしいが、とりあえず日本ではファースト・シーズン。既にあと2回の放送を残すのみ。

アーロン・ソーキン企画・脚本で、いままで何度か触れたドラマ「ザ・ホワイトハウス」を髣髴とさせる作品。ケーブルテレビ局ACNの人気アンカーマン、ウィル・マカヴォイを主人公に、真の報道を目指すニュースルームのスタッフたちを描く。このドラマの面白いところは、実在の人物や現実の事件を扱うところ。福島原発の事故や、ビン・ラディン殺害作戦も描かれる。ウィルは共和党員という設定だが、それでもティーパーティー派には納得がいかず、番組内でこき下ろす。そしてそれが、許認可権限を持つ彼らとの摩擦を避けたい経営陣との対立を招く。

ドラマの中で、ティーパーティー派のスポンサーとして名前が出てきたのがコーク兄弟。ゴリゴリの保守派にして、コングロマリットを経営、二人の資産をあわせると、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットに次ぐ影の大立者…と、まるでマンガの世界に出てくるような悪役に聞こえるのだが、なんとこの兄弟も実在するらしい。寡聞にして知らなかったのだが、探して見るといくつかの資料が見つかる。

コーク(Koch)兄弟についての考察 宮田智之

コーク兄弟の名前をだしてティーパーティー派を叩くウィルに対し、経営陣のレオナは激怒、自前のタブロイド紙やワイドショーを使ってまでウィルへの個人攻撃を開始し、方針転換かクビかを迫る。視聴率を気にしながらも、信念を貫こうとするウィルたちの葛藤も見もの。

登場人物たちのキャラクターもなかなか魅力的で、ウィル以上に理想主義に燃えるエグゼクティブ・プロデューサーのマッケンジー(テレビには映らないものの、アンカーのウィルとは逐一連絡を取って、取り上げるニュースから当日の進行までを差配する)、マッケンジーの部下のプロデューサーであるジム、そしてジムと微妙な関係であるマギー。この二人のマシンガン・トークのようなやり取りは、「ザ・ホワイトハウス」でのジョシュとドナのやり取りを思い出させる。アーロン・ソーキンの得意技。そしてレオナを敵にまわしつつも、ウィルたちをサポートする報道局長のチャーリー。

ちなみにドラマではチャーリーの元に、NSA(=National Security Agency、国家安全保障局)のスタッフを名乗る人物から「アメリカ政府が国民を盗聴している」という内部告発が入ったりするが、ちょうど最近、アメリカ政府がネット上で情報収集を行っているという内部告発があったりして、見ていてもなかなかにリアルなのが面白い。

日本での放送はまもなく終わってしまうが、続きが待ち遠しい作品だ。
posted by としゆき at 22:36| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月02日

ケータイ大喜利で初笑い

あけましておめでとうございます。

年末は30日に地元に帰省して、大学時代の寮仲間と忘年会。一泊したあと大晦日に実家に帰ったが、その前に食べた朝食は「スガキヤ」。東海3県出身者は必ず知っているラーメンのチェーン店だ(ソフトクリームも定番商品)。以前、高田馬場に店舗があって行ってみたかったのだが、機会を得ないまま閉店。と言うわけで、多分15年以上食べていなかったスガキヤの味は、あのニューヨークにあるMOMAでも売っている名物・ラーメンフォークと共に、随分と懐かしいものだった。

MOMAスガキヤラーメンフォーク

雪の降る中、静かに年を越し、慌しく元日には上京する。年末年始のお休みスケジュールがタイトだとか、新幹線が混んでいてチケットが取りにくいとか、理由は様々なのだが、最大の理由は『着信御礼!ケータイ大喜利 お正月スペシャル』生放送のスタジオ観覧のため。ケータイ大喜利は今田耕司・板尾創路・千原ジュニアの司会陣(板尾は審査委員長)で、お題に対して答えを携帯で投稿する番組。僕もかなり好きな番組で、暇なときは自分でも投稿したりするものの、やはりレベルが高くて一度も読まれず。一度でいいから「初段昇格〜」の声を聞いてみたいものだが…。

そんな訳で夜9時過ぎに渋谷のNHKへ。生放送は23時30分からの88分だが、1時間以上前に観客席についいて所謂「前説」を受ける。玄関前で行列してたときから、ちょいちょい面白い話をしていたスタッフの女性がプロデューサー(越後さん)だと判明。毎週土曜日に届くケータイ大喜利のメルマガ主筆でもあるらしい。

放送少し前にゲスト(里田まい、ユージ、阿藤快、ブラックマヨネーズ)と司会陣がスタジオ入り。ブラマヨ吉田は顔色が悪過ぎるけど二日酔いか?今田・ジュニアの二人も思ったよりテンション低くて、あれれ?と思ったけれど、本番が始まったらきっちり仕事をするのはさすがプロ。

今回は全部で5つのお題。

お題1、『「息子が初めて彼女を連れてくる!」アホアホ一家 何をした?』に対して、
   ・アドバルーンを上げて歓迎
   ・玄関前でアーチを作ったまま待っている
と言う、アンテナ2本柱判定(審査委員長・板尾による採点で、携帯の電話受信度になぞらえて1本〜3本で評価する)が続き、ややスローなスタートとなったものの、その後の
   ・表札を「山田」から「白鳥」に変えた
で火がつき、僕的に気に入ったのは
   ・画面に映る「アナログ」の文字をテープで隠した
きっとこの答えを投稿した人は、まだ地デジ化が済んでいないのでは?

ケータイ大喜利に良くあるのだが、前に読まれた答えを受けて関連事項や展開をしていく投稿が増える。今回の「アホアホ一家」では、途中の今田の「アホアホ一家、よーペン使いますね」と言うコメントを受けて、「書き物」ネタが増えたりする。最後に読まれた答えも
   ・表札の下に「別荘」と手書きした
だった。

ちなみにこの事は、wikipediaでの「ケータイ大喜利」の項目にも「かぶせネタ」と言う形で紹介されている。そこに出ている例がふるっていて、

『かぶせネタの一例として、2009年5月2日放送中に次の三部作が成立した。
 ●お題2:誰が行くか!「2泊3日○○○ツアー」とは?
   ・2泊3日他社のツアーを尾行ツアー
   ・2泊3日他社のツアーを尾行ツアーを尾行ツアー
 ●お題3:10文字作文。テーマは「気まずい」
   ・尾行ツアーがばれた。』

お題2は『NHKの人気キャラクター ななみちゃんがお正月番組に登場 「ニセモノだろ!」 何と言った?』。ななみちゃんネタは以前にも登場した人気ネタで、その愛くるしいキャラクター(スタジオで実際に着ぐるみを見ると、ほんとに可愛い)と声に全く合わない毒のあるセリフがよく投稿される。最初に今田が「今年の抱負、1年はどんな年にしたいですか?」と聞いたのに、「ケータイ大喜利のレギュラーになりたい〜」と答えてスタジオ大爆笑。「意外と野心家ですね」「若手芸人みたいな夢を持ってます」と言うツッコミが最高。

このお題への投稿は完成度が非常に高く、最初の答え、
   ・正月はギャラが良いんだ〜
から始まり、
   ・ひな段芸人は黙ってて
(ブラマヨの二人がいっせいに突っ込み)もいいし、僕のお気に入りは
   ・みんな彦根城に遊びにきてね
この次の
   ・チデジカだよっ!!(表記ママ)
と共に、「全部のキャラクターやったろう思ってんちゃう?」と言う突っ込みが。ちなみにこの、ひこにゃん→地デジカの流れも、上で書いたかぶせネタの一例だろう。

さらに笑ったのはゲストをいじる
   ・JOYはキャスティングできなかったの?

   ・おい小杉 タバコ買うてこいや
前者ではゲストのユージが本気で落ち込んでいた(お題終了後、今田に「ななみちゃん自身はJOY君とユージ君とどっちが好き?」と聞かれたときは、本物の(優等生)ななみちゃんの答えは「どっちも好きぃ〜」)。

最後の答えは
   ・どこに行っても笑福亭がいるよ
で、今田は爆笑。お題2は3本続出の好結果であった。

お題3はまだ答えを読まれた経験のない人限定の「ルーキー・オオギリーグ」。『ハンバーガーショップにて 「店員にナメられてるなあ…」なぜ?』。個人的にはあんまり琴線に触れなかったのだが、司会陣には好評だったようで、番組最後に最優秀作品賞を受けたのは、このお題に対する答え
   ・常に白目
であった。板尾の好きそうなネタなのかなぁ。

お題4はこれまた定番。『なんじゃそれ!「小6国語」テレビ欄に書かれた見出しとは?』。教育テレビを擁するNHKっぽいお題だが、投稿も力作揃いで、ケータイ大喜利ファンには有名なレジェンド、千葉県はライチンゲールさんの作品
   ・「、」でキメろ、「。」で締めろ。
が面白い。その後も、
   ・漱石夏目のすべらない小説
   ・明日使える罵声
   ・我輩が猫だ!いや我輩が猫だ!じゃあ我輩も猫だ!どうぞどうぞ
(今田「ゲストでダチョウさん来ただけや」)と思いっきり笑わせてくれる。

ところで、この番組は背景が青色のクロマキーで、そこにCGが合成されているのだが、「うさぎが跳ねていますね〜」と言うセリフにブラマヨ吉田が思わず後ろを振り返って確認したところを今田に突っ込まれる。するとすかさずスタッフもCG合成を切って、ただの青い壁を映し出す遊び心。スタジオにいる僕たちも青い背景を見ているだけだが、フロアに置かれたディスプレイでCG合成後の画面を見ることが出来るのだった。

最後のお題5も人気企画、ゲストに実際に答えを読み上げてもらう形式で、『成人式の来賓あいさつ 「新成人に何てことを…」阿藤快さん 何と言った?』。答えもさることながら、阿藤快の読み方自体が面白い。
   ・こんな所でよく育ちましたな〜
   ・頑張って社会の歯車の一つになってください
   ・明日使える罵声を今から教えます!
(ここでもかぶせネタ)と続き、今田が阿藤快の読みっぷりに大受けしていたのが、
   ・人生は早咲きタイプ 遅咲きタイプ そして咲かないタイプ!
そして、本日最後の答えは
   ・今日は君達の未来を暗示するようなどしゃぶりの雨です
と、阿藤快、毒吐きまくり。もちろん、本人じゃなくて投稿なのだが、実際には言わないだろうけれど、何となく言っててもおかしくない気がする、と言う読み上げ企画の典型的な面白さを楽しめた。

本日の投稿は全部で340,602本…そりゃ、なかなか採用されないよな〜。ちなみにこのお正月スペシャルは99回目の放送。100回記念スペシャル番組が今月の15日と22日の深夜0時から放送予定ということなので、お楽しみに。

番組終了後(NHKを出たのは1時半頃)、二千円の交通費と、ケータイ大喜利記念グッズのボールペンをもらう。3人の似顔絵と、裏面には過去の作品例が載った紙が巻き込まれているペンなのだが、作りがちゃちなのか、この写真を撮っていたら壊れてしまった…ブログや口コミで2回くらい自慢して下さいと言っていたプロデューサーの越後さん、すいません、2回目は果たせなさそうです。

NHKpen.jpg

ところで僕を知っている人で、番組を録画した人は隠れキャラの様に観客席に映っている僕を探してみて下さい。
posted by としゆき at 15:57| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月09日

振り返れば奴がいる

日本映画専門チャンネルで、懐かしいドラマ「振り返れば奴がいる」が再放送されていたので、思わず全話見てしまった。三谷幸喜の脚本で、コミカルでありながらシリアス、今の時代に見ても良く出来た作品だと思う。

ちなみに日本映画専門チャンネルはフジテレビが株主なせいもあって、フジのアナウンサーが案内役として登場したり、フジテレビ製作の映画が多く放映されたりする。たとえば「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」なんかは、このチャンネルで10月10日にテレビ初放映の予定(つまり、地上波のフジテレビより早く)。今回は「踊る大捜査線3」の公開にちなんで、主演の織田裕二の過去のドラマ作品と言うことで放映されたのだろう。

このドラマでは、いかにも「悪役」な司馬(織田)と、それに対照的な石川(石黒賢)の対立を軸に、病院内の様々なキャラクターが絡んでいく。司馬が悪役といっても、無駄な延命治療はしないと言う主義や、看護婦から渡されるプレゼントを無造作にゴミ箱に捨てる、等と言った態度からスタッフ・患者に嫌われているだけで、かつての恋人・沢子(千堂あきほ、好演)や一部の人々には理解されている。

実際、司馬の患者が手術直後になくなったケースを確たる証拠もなく安楽死と決め付けたり、大学病院時代の最後の手術でミスを犯し、患者を死なせたケース(実際は、司馬の上司であった中川(鹿賀丈史)のミスを肩代わりした)をもって、医者を辞めるべきだ、等とお気楽に糾弾する石川の「幼さ」を見ると、司馬の方がよほど「大人」だと言うことが分かる(もっとも、友達にいたら付き合いづらいタイプなのは間違いないだろうが)。大体、手術ミス云々を言うなら、石川自身も物語中トリアージでミスをして患者を死なせてしまい、告訴寸前まで行っていたりする。

考え方や性格の違いから、反目しあう二人だが、お互いに医者としての技術は認め合っている。石川の側も、病院出入りの業者であるオットー製薬の営業・星野(中村あずさ、怪演)に「司馬を倒すためならオットーの製品を一括購入しても構わない」…と迫るなど、単なる「善良キャラ」ではない(もっとも、これは胃癌でもう先がないと言う焦りから来るものではあるのだが)。

最後に、癌患者の安楽死を咎められ、病院を去ることになった司馬が病に倒れた石川の手術を担当する。手術自体は成功するものの、術後に肺梗塞を起こして石川は死んでしまう。

何を思うのか一人無言で病院を去っていく司馬。道路に立ち、鈍い衝撃を感じて後ろを振り返ったとき、オットーからのリベート疑惑を押し付けて病院から追い出した平賀(西村雅彦)に刺されている自分を発見するのだった。と言うわけで、「振り返れば奴がいる」の「奴」は、西村雅彦のことです…と言うのは、本放映当時に僕が言っていた冗談。

ところで、三谷幸喜といえば、前回書いた『ザ・キャラクター』も上演されている東京芸術劇場で、年明け1月に舞台が決まっているらしい。こちらも楽しみ。
posted by としゆき at 20:56| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月11日

トム・ウェイツ

山崎豊子の「不毛地帯」がフジテレビでドラマ化されて放映されている。主役・壱岐正を演じる唐沢寿明は好きな俳優だし、モデルとされる瀬島龍三は自伝「幾山河」や、晩年にやはりフジテレビで日本を憂える発言を繰り返していたのを見て興味がある人物だった。と言うわけで、ドラマも見たかったのだが、初回を見逃してしまったのでいま一つ気合が入らず、毎週録画してまで見ようと言う気力がなくなってしまった。

それでも仕事を終えて帰宅したとき、たまたまテレビをつけると放映されていたりして、思わず終わりまで見入ってしまう事も多い。切りのいいところまで…と思っていると、いつの間にか雪に覆われたシベリアの風景をバックにしたエンディングが始まってしまう。そのエンディングで流れるのがトム・ウェイツの「トム・トラバーツ・ブルース」。渋い低音の歌声の魅力でなかなか聞かせる曲なのだが、本当に偏見ながら、勝手に黒人の、太ったおじさんジャズ歌手のようなイメージを持っていた。

ところが、ちょっと検索してみると…



…全然違った。彼は俳優としても活躍しているようで、最近だと「Dr.パルナサスの鏡」にも出演していたらしい。

この曲がまた、ドラマの重厚な雰囲気と非常に合っている。ドラマも油田開発編となり、いよいよ終盤へ。あと何回、「トム・トラバーツ・ブルース」を聞くだろうか。
posted by としゆき at 23:37| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月20日

名将の采配

NHKで火曜深夜(24時10分〜)に放映されている「名称の采配」が面白い。歴史上有名な戦いを元ネタに、名将がどのような采配を振るったかを再現する。二人のゲストが戦場を模したジオラマで兵の動かし方を予想し、「バトルマスター」来村多加史(阪南大学教授)が解説と判定を行う。司会進行の永井伸一(NHKアナウンサー)もなかなかいいキャラを出していて、ゲストとの兼ね合いもコミカルでいい。NHKの番組と言うよりも、一時期のフジテレビ深夜放送みたいな乗りといえば通じるだろうか。

第1回の「カンネーの戦い」から、「厳島の戦い」、「サラミスの海戦」、「上田城の戦い」と放映されてきて、明日21日深夜は「アウステルリッツの戦い」。そして28日は最終回。もっと続けて欲しい気もするが、どうも期間限定の番組らしい。

よく「世界の士官学校では必ず取り上げられる」云々という言い方があるが、特に日本では軍事に対する嫌悪感が強く、あんまり戦争や戦闘について学校で教えられる事も少ない。まあ、学校で教えるのが適当なのかどうかは別として、確かに「いかにしてハンニバルは包囲殲滅戦を達成しえたか」なんて事はあんまり目にしない。そうは言ってもやっぱりそういうテーマは興味を引くわけで、こういう番組があるとそうした知識の空白を埋めてくれる。

以前読んだ『戦争学』という本もなかなか面白かった。まあ、一視聴者としてはエンタテインメントとして名将の采配を楽しめればよいが、防衛大学校辺りではちゃんと研究して欲しいものだ。

ところで以前、NHKでスポーツ関係の仕事をしている後輩に「『名将の采配』っていう番組が面白かったよ」と話したところ、「え、それは野村克也とかが出てくるんですか?」と聞かれてしまった…。まあ、スポーツ版『名将の采配』も面白そうではあるけれど。NHKで是非やって下さい。
posted by としゆき at 22:49| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月10日

官僚たちの夏

TBS系列でドラマ「官僚たちの夏」が始まった。城山三郎の同名小説が原作で、旧通産省の官僚たちを描いた作品だ。

めぼしい役職者の名前が書かれたカードを使って、理想の人材配置を考えるのが趣味の主人公、風越信吾(ただしドラマではカードでなく木の札を繰っていた)。「ミスター通産省」と呼ばれ、官民協調をうたう産業振興法案を成立させようと邁進する。ドラマで演じるのは佐藤浩市。「官僚たちの夏」は実は以前、NHKでもドラマ化されており、その際は中村敦夫が演じている。このNHK版も非常に良く出来ており、風越=中村敦夫、というイメージが出来上がっている。たとえて言えば、伊達政宗と言えば渡辺謙だし、いじわるばあさんと言えば青島幸男、というのと同じ。

自らの後継と任ずる鮎川(高橋克実=TBS版、矢崎滋=NHK版、以下同じ)、次の次と目する庭野(堺雅人、神田正輝)ら腹心と共に猛烈に働く風越は、上司だろうが大臣だろうが気にせずに自らの信じる道を突き進む。次官レースでこそ大臣の横槍による番狂わせで同期の玉木(船越栄一郎、地井武男)の後塵を拝するが、特許庁長官を経て復活、見事通産省次官に就任する。

ところが産業振興法の流産、腹心・鮎川の死と共に官僚たちの「夏」は終わり、風越も通産省を去る。風越がパリへと送り出し、フランス流官民協調政策を学ばせ、そして呼び戻した牧(杉本哲太、益岡徹)は今や次官候補の官房長。産業振興法では共闘した庭野は、健康が優れないにも拘わらず、牧によって日米繊維摩擦の最前線たる繊維局長に任命される。将来を嘱望した庭野が酷使されるのに我慢ならず、クレームを入れる風越に牧は言う…「外部から人事に干渉しないで頂きたい」…。

鮎川・庭野が次官になれなかったのと対照的に、牧や、その余裕を持って仕事に当たる態度が風越に嫌われた片山(高橋克典、風間杜夫)は(と言うか、そのモデルとなった実在の通産官僚たちは)後に次官になっている。

TBSだけに変にふざけた演出にしないか心配だったが、第1回を見る限りは今後が期待出来そうだ。
posted by としゆき at 22:31| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月24日

SHARK〜カリスマ敏椀検察官

FOXテレビで放映している「SHARK〜カリスマ敏腕検察官」が面白い。元々、「プリズンブレイク」シーズン2が放映されていた時間帯で、予約がそのままになっていて知らないうちに録り始めていた。裁判物は嫌いじゃないのでちょっと見てみたのだが、これがなかなか良い。

巧みな弁舌と、違法すれすれの強引な手法で続々と無罪を勝ち取っていた弁護士、シャークことセバスチャン・スターク。妻の殺人未遂で訴えられていた男の無罪を勝ち取るも、男は釈放直後、妻を殺害してしまう…。

茫然自失とする彼に、今度は攻守ところを変え、何と検察官として働かないかと言うオファーが届く。過去の因縁からロスアンゼルス市警からは目の敵にされ、上司はかつて何度もやり込めた相手であるデブリン検事。ところが立場を変えても彼のエネルギーは変わらない。容疑者をどんどん有罪に追い込んでいく。

彼の裁判に対する哲学は、
「裁判は戦争、敗北は死と同じ」
「真実は相対的、使えるものを選択せよ」
「陪審裁判では重要なのは12個の意見だけ」

「真実」や「正義」でなく、裁判を「ゲーム」としてしか考えていないようだが、ドラマの中ではやはり彼なりの葛藤がそれなりに描かれる。離婚した妻との間の一人娘を手元に預かったり、自分が原因で解雇に追い込んでしまった元LA市警の調査官を雇ったり…と、人間臭い部分も垣間見せるが、機関銃の様に発せられる攻撃的なトークと、勝利のためにフル回転を続ける彼の頭脳、スピーディーな展開が初期"ER"の様で心地よい。

哲学の2番目にもあるが、彼は隠し事はしてもでっち上げはしない。ホラは吹いても嘘はつかない…というところか。そのギリギリの駆け引きが裁判物の面白いところ。第3話までの放映で、ややご都合主義的な展開も見えてきた感もあるが、第1話の様な気合の入った脚本が続けばもっと面白くなるに違いない。とりあえず、しばらく見続けてみよう。
posted by としゆき at 18:23| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月19日

7A WF 83429

スーパー!ドラマTVでこの8月から「ザ・ホワイトハウス」第5シーズンの放送が決定し、今日その第1話(通算89話)「祈り」が放映された。原題は"7A WF 83429"。なおこの記号は、第4シーズン最終話である事件に巻き込まれた重要人物を指すFBIのファイル番号を表す。

第4シーズン終盤で「ある主要人物」が舞台を去り、さらに上記FBI番号に関係する「ある事件」が発生して合衆国憲法修正第25条が適用され、「ある重要人物」が一時的に職務から離れる。その後を襲った「ある人物」は「ある決断」を迫られる…と、伏字だらけだが、まだ見てない人のために一応書かないで置く事にする。

このドラマは日本では今までNHKで放映されていた。ところがNHKが韓流ドラマにはまって、「ザ・ホワイトハウス」の放映を取りやめてしまう。その後スーパー!ドラマTVで再放送されていたのだが、好評だったと言う事なのだろう、第5シーズンから当チャンネルが独自に日本での放送を開始した。今さら韓流でもないだろうし、2008年大統領選挙に絡めて非常にいい素材だと思うのだが、NHKと来たら…はてさて。

その第5シーズンを見て、まず違和感があったのはやはり吹き替えの声。主要キャラクターの中でも、首席補佐官レオ、次席補佐官ジョシュ、広報部長トビー辺りは同じ吹き替え。だが、大統領バートレットや報道官CJは思いっきり変わっており、しかも登場頻度が高いせいで違和感ありまくり。以前のNHK時代、広報部次長だったサムの吹き替えが変わったときも、もの凄い違和感を感じたが、その後慣れていったことを考えると、これも時間の問題かもしれないが。

ところで、上で書いた修正第25条。修正条項はアメリカの憲法を論じるときに良く聞く言葉だが、これは既存の25条が「修正」されて書き換えられたわけではない。元々の憲法は本文7条からなり、こちらの「条」は"Article"。どちらかというと日本国憲法での「章」に当たる。アメリカ憲法の各「条」はさらに"Section"に分けられている。一方、修正条項は"Amenment"と呼ばれ、本文の後に追加される形を取る。上に述べた修正第25条以外にも、良く議論になるのが修正第2条(人民の武装権)だ。「銃社会アメリカ」を語る上で避けて通れないこの修正条項に関しては、松尾文夫の「銃を持つ民主主義」にその成り立ちも含めて詳しく論じられている。

さて、「条」が"Article"と言いながら、これまた良くメディアで話題に上る「破産法第11条」は、「チャプター11(イレブン)」と呼ばれる。こちらも、どちらかと言うと日本語の「11章」の方が近いイメージだと思うが、ちょっと調べてみると意外にややこしい。

まず、合衆国法典(U.S.C.=United States Code)と呼ばれる法令集があり、分野別に50の編("Title")に分けられる。破産関係の法令はTitle 11 "Bankruptcy"に纏められている。そしてその中のChapter 11 "Reorganization"がいわゆる「チャプター11」に当たり、4つの"Subchapter"に分かれ、その下にある各"Section"が日本で言う「条文」に近い。

編によっては"Chapter"と"Section"の間に"Part"があったり、チャプター11の様に各階層に"Sub-"が存在したりと色々のようだ。と言うわけで、ニュースなどで「破産法第11条」というと連想するような特定のある一文が存在するわけではないのだ。日本での「民事再生法」に近いと言われるチャプター11に関連して、破産手続きを定めた「チャプター7」("Liquidation")や、個人の債務を扱うチャプター13等も存在する。

さて、2007年夏以降のクレジット危機の一連の過程で、モノラインと呼ばれる金融保険会社が話題になった。通常の保険会社(マルチライン)と比較して、金融面での保証に特化していることからこう呼ばれる。長らく地方公共団体の債務を保証する事で手数料収入を得ていたが、CDO(=Collateralized Debt Obligation、債務担保証券)等の保証ビジネスに手を広げ、痛い目にあったのは周知の通り。これによってモノライン各社も格下げが相次ぎ、地方自治体によってはそのファイナンスに支障を来たすケースも出始めている。

アメリカのテレビドラマでもお馴染みの"The O.C."ことカリフォルニア州オレンジ郡。この自治体はかつて、金融取引で大損をして破綻した経験があるが(このあたりは「大破局(フィアスコ)」に詳しい)、クレジット危機やモノライン業界の今後の動向次第では、他の自治体にも悪影響が及び、今後メディア上で「チャプター9」("Debt Adjustment of a Municipality")について耳にする機会も増えるかもしれない。
posted by としゆき at 23:16| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月19日

バッテリー

今月からNHKでドラマ「バッテリー」が放映されている(総合、木曜20時)。原作はあさのあつこの小説で、映画化やラジオドラマ化もされている。中学に入学した天才ピッチャー・原田巧と、彼のボールを受け止められるキャッチャー・永倉豪のバッテリーを描いた作品だ。ドラマに先立って映画版も見てみたが、思った以上に良い作品だったので正直、驚いた。原作や映画が話題になっていた事は知っていたが、逆にこれほどならもっと評価されてもいいのに…とも思ったほど。

で、ドラマ版はまだまだ序盤、巧と野球部監督・戸村の衝突が始まったばかり。戸村を演じるのは千原ジュニア。なかなかの熱演で、NHK深夜の「着信御礼!ケータオ大喜利」でも今田耕司にちゃかされていた。でもやっぱり映画版の萩原聖人の方がしっくりくる。というか、登場人物全般に、どうしても先に見た映画のイメージが強いので、いま一つテレビ版にはなじめない。原田巧も映画版の、繊細そうでいて芯の強そうな林遣都の方が印象が強い。

ドラマ版は巧・豪・巧の弟である青波の3人がジャニーズJr.で占められ、肖像権の関係なのかNHKのドラマ版キャスト紹介のページ(http://www.nhk.or.jp/battery/html_batt_cast.html)ですら写真でなく似顔絵になっているのも、何だか頂けない(って、作品の面白さとは関係ないのだが)。ただ映画版での母親・天海祐希だけは浮いていたので、ドラマ版の斉藤由貴の方がしっくりくる(と言うと贔屓の引き倒し?)。

映画版でもライバル・横手二中の門脇に至ってはとても中学生には見えないキャラ(台詞回しや体格も含め)で笑えたりもしたが、これからドラマ版ではどのように描かれていくか。原作も読んでみたいが、文庫本で6冊となかなかの大部なので、ドラマの出来具合で読むかどうか考えるとしよう。
posted by としゆき at 18:10| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月28日

坂の上の雲

司馬遼太郎の「坂の上の雲」といえば、俳人・正岡子規と、秋山好古(陸軍)・真之(海軍)兄弟を主人公に、江戸から明治へ、そして日清・日露戦争へと突き進む「青春期」の日本を描いた小説だ。いわゆる「司馬史観」と称される彼の明治時代観を背景に、非常に人気の高い作品だ。映像化を頑なに拒んできた司馬遼太郎やその遺族だが、NHKが連続ドラマとして作品化することが決定し、先頃、その収録が開始された。当初、脚本家に指名された野沢尚が自殺するなどしてその完成が危ぶまれたが、2009年からの放映が決定されている。

22日にNHKで「坂の上の雲 司馬遼太郎が残したメッセージ」と題して、そのメーキング番組が放映されていたので見てみた。主要キャストの本木雅弘(秋山真之)、阿部寛(秋山好古)、香川照之(正岡子規)が明治時代の若者を演じている姿を見ると、写真でしか見た事のない3人に重なって見えるから不思議だ。本木雅弘はインタビューの中で、個々の役柄を演じるというよりも、明治という時代の照り返しを受けた当時の若者全てを表現してみたい、と言うような事を述べていた。確かに幕藩体制崩壊、国民国家成立、国家存亡を賭けた時代と、司馬遼太郎のみならず、今でも多くの日本人の郷愁と憧憬を受ける時代であり、演じる側の本木達も思うところがあるのだろう。

「坂の上の雲」が原作と言うわけではないが、秋山真之を主人公に明治時代を描こうとしたマンガに、江川達也の「日露戦争物語」がある。名作「東京大学物語」に続いてスピリッツに連載された作品だが、初期の気合の入りまくった彼一流の精緻な書き込み、マニアックな台詞回しで買い続けていたが、徐々に絵柄が荒れてくると言うか、手抜きと言うか、締め切りに間に合わせるためのやっつけ仕事というか、目も当てられない画風に変化して行き、あろう事か日清戦争時点で作品が打ち切られてしまった。当時から、「これじゃ『日清戦争物語』でしかない」という批判もあったのだが、いまやそれが現実のものとなってしまった。

秋山真之といえば日本海海戦での「丁字戦法」で知られるが、最近の研究では「丁字戦法」は行われなかったというものもある。明治物を書かせたらめっぽう面白い半藤一利は「日本海海戦かく勝てり」(戸高一成との対談をまとめたもの)の中でそのことに触れている。半藤一利といえば、司馬遼太郎が最後に書こうとして果たせなかったノモンハン事件を「ノモンハンの夏」の中で描いている。日本陸軍参謀本部作戦課が存在した三宅坂と、関東軍作戦課の存在した満州・新京の「秀才たち」が、いかに無責任に悲劇的な状況を招いたのかが流麗な文体で描写されている。ソ連軍戦車舞台の前に壊滅的な打撃を受けた日本陸軍、もし戦車連帯に召集された経験もある司馬遼太郎が描いたらどんな作品になっていただろうか。

ともあれ、来年秋からの「坂の上の雲」の放送が楽しみに待たれる。
posted by としゆき at 23:21| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月06日

数学者はキノコ狩の夢を見るか?

テレビ雑誌としてテレパル(後にテレパルf)をずっと愛用してきたのだが、先頃、休刊(という名の事実上の廃刊)してしまった。月刊で代替となるテレビ雑誌を探していて、今のところ「デジタルTVガイド」(東京ニュース通信社)が便利そうだ。毎日、地上波・BS・CSが各々見開き、計6ページで表示される。テレビ雑誌が地上波を載せるのは当然として、NHKのBSやWoWoW以外のBSデジタル等は、小さい欄に詰め込まれて読みにくかったり、番組欄がそもそもなかったりする(テレパルでも一時期BSデジタル欄がなくなっていた)。さらに、現在加入しているケーブルテレビの番組も多くCS欄に表示されており、今まで見逃してしまうことも多かった番組を当日確認できるようになったのがうれしい。

そんな中、ふと目にしたのがNHKハイビジョン特集「世紀の難問に挑んだ天才たち」。100年以上未解決だったポアンカレ予想、「単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相である」ことを証明したロシア人、グレゴリ・ペレリマンの事を描いた作品だった。以前だったら番組の存在に気づかずに見逃してしまっていただろうが、新雑誌の早速の賜物、面白そうな番組だったので視てみることにした。放映時の題名は「数学者はキノコ狩の夢を見る〜ポアンカレ予想・100年の格闘〜」。ちなみに、科学雑誌サイエンスは、2006年の「10大ブレークスルー」第1位として「ポアンカレ予想の解決」を選んでいる。

ポアンカレ予想を直観的に理解するのは難しいが(と言って、僕も数学的に厳密には理解できないが)かいつまんで言うとこうなる。まず単連結について。ある空間の中で、自分自身に戻ってくるようなループを考えて、そのループの輪をどんどん小さくしていく。もし、そのループが出発地点に収束できればその空間を「単連結」という。無限に平坦な平面を考えれば、どんなに複雑な経路を経てループを閉じたとしても、そのループは出発地点まで収束できる(番組の中では、紐を後ろに引いた船やロケットがぐるぐる回って出発地点に戻り、その後、紐を手繰り寄せるイメージを用いていた)。したがって平坦な平面は単連結だ。

ところで、2次元面は必ずしも無限に平坦な平面とは限らない。風船や地球のような球の表面を考えれば、縦横の2方向しか自由度がない(上下には移動出来ない)2次元面だが、その大きさは有限であり、平坦な平面とは異なる。ところが、番組ではマゼランの世界一周航海をたとえに出していたが、地球表面上をどのように移動したループを作ったとしても、そのループの紐を手繰り寄せる事で、出発地点に紐を回収することが出来る。つまり、2次元球面は単連結だ。

では2次元面がすべて単連結かというとそうではない。一番簡単な例はトーラス(穴の開いたドーナツの表面)だ。この穴が開いていることによって、どんなループも一点に収束するわけにはいかない。具体的には、穴を回るようなループを考えればよい。このとき、紐はどんなに手繰り寄せても回収することは出来ない。つまりトーラスは単連結ではない。

余談だが、「ドラゴンクエスト3」では地球を模したマップを持っており、船で「世界一周」が行えた。上(北)にどんどん進んでいくと、いつか元居た場所に下(南)から戻ってくる。また、右(東)にどんどん進めば左(西)から戻ってくる。つまり、この世界の「地表面」は、メルカトル図法の地図の上辺と下辺をくっつけて筒型にし、その後、その筒をぐるっと曲げて筒の端の穴同士をくっつけたような形、つまりトーラスになっているのだった。よって、ドラクエ3の世界は単連結にはなっていない(別にゲームを進める上でその知識は全く必要ないのだが)。

閑話休題。また、位相幾何学(トポロジー)の世界では、連続的な変換で互いに移り変わる物は同じ(同相)だとみなす。よく入門書に出てくるのは、伸縮自在のゴムで出来たようなドーナツは、どんなにがんばっても球には出来ない(穴があるから)。ところで、穴の開いた取っ手を持つマグカップは、連続的に形を変えることでドーナツに出来る。よってマグカップとドーナツは同相だ。

したがって、ポアンカレ予想とは、こういうことになる。三次元で閉じた空間があったとき、自分自身から出発して元に戻るループを考える。どんな経路のループを選んでも、それが出発地点に収束できるとき(単連結であるとき)、その空間は3次元球面に連続的に変換できる…。

ニュートンに始まる微積分に対し、トポロジーは全体としての形状を問うと言う意味で毛色が異なる。番組の中では、20世紀初頭のアール・ヌーヴォーの影響でトポロジーが産まれた…という説明をしていた。文学・美術・音楽等の芸術分野がある時代に、ある思想に影響を受ける(あるいはある思想の元で共通の解釈が出来る)事はよく知られているが、科学分野でもそうした影響があるのは面白い。この辺りは科学史的に掘り下げてみたい。

ポアンカレがトポロジーの分野で提出したポアンカレ予想。多くの科学者がその謎に挑むも、ことごとくその挑戦をはねつけてきた。ギリシャ人数学者、クリストス・パパキリアコプーロスは、ポアンカレ予想に挑戦し続けてついにその夢は適わなかったのだが、ギリシャでは彼をモデルにした小説「ペトロス伯父とゴールドバッハの予想」という作品がベストセラーになったと言う。ペトロス伯父さんのように数学者になりたいという高校生の甥に対し、彼はある問題を出題し、それが解けたら数学者になることを許可するという。甥はついに問題を解くことが出来ず、数学者の夢を諦めるが、その問題はいまだかつて誰も解いたことのない問題だった。その後、老数学者ペトロスは、問題を解決した幻想の中で死を迎える…。

ポアンカレ予想は、その後、スティーブン・スメールにより5次元以上の高次空間で証明され、マイケル・フリードマンが4次元でも解決する。ところが、肝心の3次元空間ではいつまでたっても解決できなかった。一方、ウィリアム・サーストンは「三次元多様体は一様な幾何構造の断片に分解できるだろう」という幾何化予想を提出。単純に言ってしまうと、どのような三次元空間も、8種類の基本的な幾何構造を持つ部分空間の和として表現される、と言うもの。この中に3次元球面が含まれており、さらに3次元球面以外は単連結ではないことから、この幾何化予想が正しければ、その系として自動的にポアンカレ予想が証明される事になる。

ペレリマンが証明したのがまさにこの幾何化予想。しかもトポロジーの問題を、微分幾何学と物理学の手法を用いて解決したことから、並み居る位相幾何学者が落胆することになったというのが面白い。2003年にプリンストン大学で彼の講演を聞いた人々は、「ポアンカレ予想が解かれてしまったことに落胆し、トポロジーの手法が用いられなかったことに落胆し、さらにペレリマンの証明内容が全く理解できなかったことに落胆した」。

ペレリマンはその後、隠遁生活に入ってしまい、2006年の国際数学者会議で授与されたフィールズ賞も受賞拒否。彼に送られるはずだった黄金のメダルは、今もベルリンにある国際数学連合の地価金庫に眠っている(ちなみにスメール、フリードマン、サーストンもフィールズ賞を受賞している)。

さて、ペレリマンは彼の証明論文を科学雑誌に投稿したのではなく、インターネット上の論文サーバーに掲載した。このようなプレプリント・サーバーは、特に物理学の分野では基本になっており、審査員によるレビューを経て科学雑誌に掲載される前から、ネットで幅広く公開される。もちろん、誰でも投稿出来ることから、中には怪しげな論文もあるし、その全てが最終的に雑誌掲載されるとは限らない。僕が学生だったときも、毎日このプレプリをチェックすることが日課だった。
ペレリマンの論文に興味のある方は以下へどうぞ(著者名のGrishaはグレゴリの愛称):

Finite extinction time for the solutions to the Ricci flow on certain three-manifolds
Ricci flow with surgery on three-manifolds
The entropy formula for the Ricci flow and its geometric applications

ところで、番組名にある「キノコ」は、キノコ狩りが趣味だったペレリマンに因んだもの。番組を見るまでは、「やっぱり数学者とか芸術家は、『キノコ』でも使ってトリップしないといい仕事が出来ないのか」と思っていたけれど全く違った。よく考えたらNHKがそんな番組やるわけないか。
posted by としゆき at 22:04| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月16日

Alea jacta est!

WoWoWで、古代ローマを描いた"ROME"が始まった。米HBO・英BBC共同制作の大河ドラマだ。HBOといえば"Sex and the City"でも知られ、以前「宇宙への旅」でも触れた、「人類、月に立つ」も製作したテレビ局。BBCは言わずと知れた英国放送協会。特に骨太のドキュメンタリーや歴史物には定評があり、さらに古代ローマ研究では世界をリードするのがイギリス。ということで、期待して見てみた。

13日に放映された第2話が既に「ルビコン渡河」。と言う事で、塩野七生の「ローマ人の物語」風に言えば「ユリウス・カエサル ルビコン以後」が中心となるだろうか。実際、プログラムガイドの解説を見ても、主な舞台はガリア戦役以後のローマが中心となるらしい。

現在のところ、カエサル(シーザー)対ポンペイウスの対立を軸に、アントニウス(第二回三頭政治)、オクタヴィウス(カエサル後継者、初代皇帝)、マルクス・ブルータス(「ブルータス、お前もか!?」)等が登場。と言う事は、ガリア戦役後、「内乱記」に描かれた時代、対ポンペイウス戦、クレオパトラ7世が登場するアレクサンドリア戦役、そしてカエサル暗殺、ローマの帝政移行…とドラマチックな展開が続く。

ところで、シェークスピア劇で有名になった「ブルータス、お前もか!?」だが、マルクスとは別人のデキムス・ブルータスに対して発せられたという説も根強いらしい(デキムスもカエサル暗殺メンバーの一人)。塩野七生もこの説をとっている。カエサルの遺言状でも、オクタヴィウスが相続を辞退した場合の相続権は、このデキムス・ブルータスが指名されていた。それくらいカエサルはこの「青年ブルータス」を買っていたという。

ドラマの方は基本的に史実に基づきながらも、狂言回しとして百人隊長ヴォレヌス、その部下ブッロが登場。歴史上のエピソードに架空の人物達が絡んでいく展開は、手塚治虫等が得意とした表現方法だが、最初の2回分の放送を見た限りでは、割とうまく演出に成功しているように思えた。共和制への敬意を隠さないヴォレヌスと、ある意味人生を割り切っているブッロ、この二人が今後どのように歴史と関係して行くのかも楽しみだ。

とりあえず、連休中に「ローマ人の物語」の「ルビコン以前」と「ルビコン以後」を読み返してみた。塩野七生が引用しているイタリアの歴史教科書…「指導者に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意思。カエサルだけが、このすべてを持っていた」。カエサルならぬ凡人としては、同じく塩野七生が好んで使うカエサル自身の言葉、「多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」という警句に心しながら生きていくとしよう。
posted by としゆき at 14:14| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

自由を掴め。

宇多田ヒカルの歌声と、大友克洋原画のアニメーションが印象的な日清カップヌードルのCM。SF調のストーリーと、「FEEDOM 自由を掴め。」というコピーと共に、何故か主人公達がカップヌードルを食べているシュールなCMを見た事がある人も多いのではないか。この企画は"FREEDOM-PROJECT"と銘打たれて、テレビCMだけでなく、小説やDVD化もされている。

週末にケーブルテレビでこのアニメ版「FEEDOM」全6話のうち、「EDEN編」として前半3話が放映されていたので見てみることにした。大友克洋とSF といえば名作「AKIRA」を思い出すが、このアニメーションのキャラクターもまんま「AKIRA」で、主人公タケルは「AKIRA」での金田、タケルの友人カズマは同じく鉄雄にそっくりだ。タケルは変な寝癖(?)で金田とは微妙に異なっているが。

火星探索の前線基地として月面に住み始めた人類。宇宙ステーション落下事故に伴う地球環境の悪化・戦争状態を経て、「人類唯一の居住地」として月面都市EDENが建造された。EDENでは「科学技術の研究」と「地球への渡航」が禁じられているのだが、ふとしたきっかけから主人公タケルは地球への思いを募らせていく。

地球とは反対側の月面に位置するEDEN住民は、実際の地球の姿を見る事もないまま、地上は放射線で汚染されており、人類などいないものだと思い込んでいた。密かにEDENを抜け出して青い地球を目の当たりにしたタケルは、EDEN当局に身を追われながら、カズマに変わってロケットに乗り込んだビスマルクと二人で地球目指して旅立っていく。

番組の最後では作品背景まで紹介されていたが、以前の"NO BORDER"シリーズで宇宙ロケまで敢行してしまったカップブードルのCM。企画・原案の高松聡(電通?)が語っていたが、新たな表現の地平として選ばれたのがアニメーションだった。CM版とDVD版が連動し、3DCGをふんだんに用いながらも、境界線のはっきりした、いかにも日本風アニメーションの作風で描かれる。予告編によるとタケル達は無事に地球に辿り着くようだが、果たして今後どのような展開をしていくのか。自由は掴めるのか。カップヌードルはどこまで絡むのか…確かにこれを書いてたら、カップヌードルが無性に食べたくなってきた。日清&電通恐るべし。
posted by としゆき at 23:07| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月02日

坂の途中に愛がある

今更ながらテレビ朝日でドラマ化された「めぞん一刻」を見てみた。「めぞん一刻」といえばビッグコミックスピリッツ創刊号から連載されていたラブコメだが、その後テレビアニメ化され、アニメ版・実写版で映画化もされた。ドラマ化の噂は去年からあったのだが、配役等が直前まで発表されず、ネット上でも主人公の管理人さん=音無響子を誰が演じるのか?で侃侃諤諤の議論が繰り広げられていたりした。

結局、伊藤美咲が管理人さん役、もう一人の主人公、五代裕作は一般公募の新人(中林大樹)ということになった。個人的には今ひとつだなぁ…というところか。伊藤美咲は当初予想したよりもまあまあの出来だった気もする。原作同様、くるくる変わる管理人さんの表情をうまく演じていた。まあ少なくとも実写映画版の石原真理子よりはましだったかも。さらに、他の配役でも、四谷さん役は是非とも映画版と同じく伊武雅刀の「怪演」を再現して欲しかった(今回は岸部一徳)。

「めぞん一刻」は原作よりもテレビアニメ版の方のイメージが強いため、やっぱりオープニングは「悲しみよこんにちは」じゃないと寂しいし、エンディングはピカソがいいし、管理人さんの声は島本須美(「風の谷のナウシカ」のナウシカ役、「ルパン三世・カリオストロの城」のクラリス役、「となりのトトロ」のさつきとメイの母親役等、宮崎駿のアニメに良く参加していた)が一番しっくりくる。その代わり、髪の毛が紫色だったりするのだが。

それから、「めぞん一刻」は登場人物がみんな数字を名前に含んでいる(一刻館住人は部屋番号も対応している)のは有名で、一の瀬・(アニメ版には登場しない)二階堂・三鷹・四谷・五代・六本木・七尾・八神・九条と続くし、管理人さんの旧姓は千草(1000)なのだが、音無の「無」はゼロを意味するというのは、大学時代の知り合いに指摘されるまで気付かなかった。確かに原作第54話の「草野球グランドクロス」では、管理人さんは背番号「0」だった。

さらに余談だが、以前行った中国でも、「相聚一刻」(「相聚」は「あいあつまる」と言う意味らしい)としてDVDが発売されていたのを見かけた。アニメのテレビ版・映画版を両方収録している「お買い得」商品なのだが…ちゃんと許可取ってるのかな??

ドラマ版で今回描かれたのは、五代君が大学に合格するシーンまで。一応、七尾こずえや三鷹さんも登場し、(『Happy!』でも書いた)「視聴率が高ければ続編」といういつもの手法か。しかし何故エンディングテーマが、「めぞん一刻」とは全く縁もゆかりもない松任谷由実の「守ってあげたい」なのか?

「めぞん一刻」の原作は高橋留美子だが、彼女の他の作品には宇宙人や妖怪が登場したりして余り好きではない。「めぞん一刻」が好きな人には、同様のラブコメ作品として、先頃完結した「1ポンドの福音」がおすすめ。是非どうぞ。
posted by としゆき at 18:14| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月04日

"Buy Japan Out!"

現在毎週土曜日、NHK総合で連続ドラマ「ハゲタカ」が放映されている。柴田恭平演じる三葉銀行の芝野と、大森南朋演じるホライズン・インベストメントの鷲津。二人の対立を軸に物語が進行していく。

鷲津は以前、三葉銀行で芝野の部下として勤務していたが、大きなライバルとして芝野の前に再び現れる…という設定。また、栗山千明演じる経済記者・三島由香も、三葉銀行時代の鷲津による貸し渋りで町工場を経営する父親の死に直面している。

ところで、この手の物語はこうした登場人物間の因縁や、意外な過去等がキーとなることも多い。個人的にはそうした義理人情の世界でなく、純粋にビジネスだけの物語が創れないものかと思うのだが…。

第1回のテーマは都銀による不良債権のバルクセール。日本の景気回復と共に邦銀復活も叫ばれる昨今、随分と昔話にも聞こえるが、ほんの10年前の出来事だ。ドラマでは、多くの不良債権に1円というビッド価格を提示して「ハゲタカ」呼ばわりされながら、個々の債権現場に出向いてデュー・デリジェンス(資産査定)をきっちり行っている場面も描かれるなど、一面的な見方に偏らない演出には好感が持てる。

実際、日本型経営のしがらみを断ち切れない芝野(邦銀側)が善であり、"Buy Japan out!"(日本を買い叩け!)と突き進む鷲津(ファンド側)が悪である…という単純な構図ではない。第2回、第3回で玩具メーカー再生を巡って丁々発止のやり取りを繰り広げた挙句、芝野は銀行での自分の仕事に疑問を持ち退職、企業再生家となる。また、鷲津自身も、日本経済そのものの再生を信じ、三島もそんな鷲津を信じるようになっていく。

物語はいよいよ後半戦に突入。電機メーカー買収を舞台に、芝野・鷲津、そして鷲津によって実家の老舗旅館を売り飛ばされ、父親を失った後、起業家として劇的な再登場を遂げる西野治(松田龍平)の戦いが始まる。

「失われた10年」以後、日本の金融界を舞台に描かれた作品は数多いが、このドラマは物語自体の面白さだけでなく、いかにもNHKらしい骨太の演出と、勧善懲悪でなく、ある種、冷徹な目で企業再生を取り上げた点で興味深い。残り3回が楽しみだ。
posted by としゆき at 22:49| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月16日

歌うように。

本日からフジテレビの月9枠で「のだめカンタービレ」が始まった。のだめこと、野田恵(のだめぐみ)を主人公にして、クラシック音楽の世界を舞台に描かれた作品だ。

原作が掲載されているのが女性向漫画雑誌(「Kiss」)なので、当然目にする機会もなかったのだが、以前にどこかの書店でオススメ作品としてPOPが飾ってあり、クラシックとマンガという組み合わせに興味を持ったのを覚えている(書店店員発のベストセラーとしてはリリー・フランキーの「東京タワー」の例もあるし、掘り出し物である事も多い)。そのときは読まなかったのだが、フジテレビでドラマ化されるという話を聞いて、モノはためしと読んでみたら、確かに面白かった。

以前、「Happy! 」でも書いたが、マンガ原作のドラマ化・映画化はビジュアル面でのイメージが強すぎるため、実際の役者を使った映像が受け入れられるのは難しい。だからこそ敢えて原作を改変してみたり、新キャラを登場させてみたりするのかもしれないが、僕は割と原作に忠実な作品が好きだったりする上に、コミックの方が非常に面白かったので、期待半分、不安半分だったのだが、今日の第1回を見てみた。

今回のドラマではのだめ役を上野樹里。のだめ憧れの先輩で、ある意味のだめ以上に物語のメイン・キャラクターとなっていく千秋真一役に玉木宏。この二人は結構、原作の絵のイメージに近い。のだめのぶっとんだキャラクターも、いろいろ奇行(?)が噂される上野樹里に合ってたりして。ただ指揮者、シュトレーゼマン役の竹中直人だけはあまりにもイメージが違いすぎて、ちょっといただけない…。竹中直人は芸達者なので、ドラマとしてはそつなくこなしているのだが。

とりあえず、原作のいわゆる「マンガ的表現」は、テンポの良い演出も手伝って、そこそこ映像化できていたのではないか。逆に実際の音楽表現という意味では、テレビは原作に100倍する力がある。なんとか及第点は挙げられそうなので、今後も期待して見てみることにしよう。

posted by としゆき at 22:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月11日

イサクとイシュマエル

今日は9月11日、世界を震撼させた同時多発テロから5年。当時、会社の研修でロンドンに滞在していたが、授業開始と同時に講師が「この中で、家族がアメリカ政府関係者の人はいるか?」と質問を始めた。普段は軽妙な口調で研修を盛り上げていたそのフランス人講師は、「今、ペンタゴンが炎上している。」と語り始めた。

いささかブラックではあるが、その突然の切り出しに、いつものごとくどんなジョークを始めるのか…と聞いていた研修生の顔からも、「ワールドトレードセンターからも白煙が昇っている」「本日の研修は中止にするので、各自自宅待機して欲しい」と続く言葉に、次第に笑顔が消えていった。

会場近くのアパートに住む同期の家に皆で集まり、CNNの速報をじっと見つめる。余りの出来事に言葉もなく、理解するのに時間がかかったのを覚えている。当時滞在していたのは、マーブルアーチ駅近くのアパート。ロンドン市内でもアラブ系住人が多く、中東料理レストランやアラビア語の看板など、ちょっとしたアラブ人街を構成していた。そうした地区に住む研修生を引っ越させようという動きがあったという話もあとで聞いたが、意外に冷静な生活が続いたのは、あくまで「海の向こう」の出来事だったからだろうか。

9・11では多くの人が犠牲になっている。金融業界でも、ワールドトレードセンターにオフィスを構えていたキャンター・フィッツジェラルド社の被害は甚大だった。米国債のブローキングでは7割のシェアを誇る最大手の同社だが、一瞬にして700人近い社員を失い、壊滅的打撃を受けた。今でも同社は9月11日をチャリティーデーとしており、当日の取引手数料全額を遺族用の基金に寄贈している。

テロ直後、アメリカのテレビドラマ「サード・ウォッチ」や、ここでも何度か採り上げた「ザ・ホワイトハウス」は、特別エピソードを作成しており、本日、ケーブルテレビのSuper!drama TVでも放映されていた。

普段の「サード・ウォッチ」は、ニューヨーク市警本部(NYPD)やニューヨーク市消防局(FDNY)の活躍を描いた作品だが、実際に現場で懸命の消火・救援活動に当たった警官や消防士達のインタビューからなる「彼ら自身の言葉で」が放映された。プロとして、淡々と9・11当日の様子を語るその言葉は、余りにも重い。

また「ザ・ホワイトハウス」は米大統領とそのスタッフ達を描いた作品だが、普段とはやや毛色を変えて、何故テロは起こるのか?なぜテロは亡くならないのか?と問う学生の質問に答えようとするスタッフを描いた「イサクとイシュマエル」を放映してた。日本ではNHKが放映しなかったせいでお蔵入りとなっており、第3シーズンのDVDに特別収録されたエピソードだが、聖書のエピソードに拠りながら、対立の起源を語る。

テロの始まりは何かと問う学生に、大統領夫人は、イサクとイシュマエルのエピソードを語る。聖書に登場するアブラハムには長らく子供が生まれず、メードとの間に子供(イシュマエル)をなす。ところがその後、正妻サラは念願の子供(イサク)を授かり、イシュマエル母子を追放するに至る。「これが始まり。イサクの子孫がユダヤ人。イシュマエルの子孫がアラブ人…でも忘れてならないのは、この息子二人が一緒に父親を埋葬したこと」。そして次席補佐官ジョシュ・ライマンはこうも付け加える。「その出来事があったのは7300万年前だ…ここは複合社会だ…思想は1つじゃない。広く受け入れよう」。

いかにもアメリカ的な論理であり、ややもすると独善的にも聞こえるが、実際に「対テロ戦争」当事国として、自分達の言葉で、自分達の考えを語れるのがアメリカの強さなのだろう。果たして日本が同じ立場にあったとき、そこまでの「覚悟」を決められるのか、いささか心許ない。やはり、日本人にとっても「海の向こう」の出来事にしか感じられないのだろうか。
posted by としゆき at 21:09| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月02日

"John Carter, M.D."

NHKで長らく放映されてきたアメリカのTVドラマ「ER」の第11シーズンが終了した。第1シーズンから見続けてきたが、なんと言っても感慨深いのは、本当の主人公とも言うべきジョン・カーター役ノア・ワイリーの降板だ。ERの原作となったのは、「ジュラシック・パーク」等でも知られるマイクル・クライトンのノンフィクション「五人のカルテ」。自身も医学部生であったクライトンがモデルとなったといわれるのがカーターであり、インターンとしてカウンティ総合病院に登場したときから、一番好きなキャラクターだった(ちなみに「カウンティ」はcounty=郡であり、何故病院名をオリジナルと同じクック郡総合病院にしなかったのかは不明)。

アメリカのドラマは人気が出ると、続編として新シーズンが始まっていき、それとともに役者達も(物理的に)成長して、ある意味大河ドラマの様に楽しめる。日本でも人気だった「フレンズ」や「ビバリーヒルズ高校(青春)白書」等もそうだった。「ER」も日本では第11シーズンが終了したところだが、アメリカでは第13シーズンが放映中。役者が次々と降板し、新キャラもどんどん登場する中、第1シーズンからずっとメーンを張り続けたのがカーターだった。お金持ちのお坊ちゃんで、右も左も分からなかった彼が、医者として成長していく。大学を卒業した頃に放映が始まったこともあり、ドクターの道を歩み始めたカーターに思い入れを感じていたものだ。

好きなストーリーやシーンは数多くあるが、改めて思い出すのは第2シーズン最終話、「ドクター ジョン・カーター("John Carter, M.D.")」だ。タイトルがまず「     ジョン・カーター」とやけに右よりに表示され、じわじわっと「ドクター」の文字が追加される。その下に表示された英語版タイトルも、左寄りに"John Carter     "と表示され、同じく", M.D."の文字が現れる。当初外科を目指していた彼は、患者に付き添うために医学部の卒業式を欠席する。それを見た師匠でもある外科医のピーター・ベントンが「カーター…お前、いい医者になるよ」と優しい言葉をかける…。

学生から、本当のドクターとなったカーター。その後も、常に相手の立場を考えて患者と接するカーターの優しさは多くの医者の中でも群を抜いていた。その後、切ることだけを考える外科でなく、本当に患者の役に立ちたいということでER=救急救命室に転属し、チーフ・レジデントとなり、そして最後には終身在職権まで手にするものの、愛する人の待つアフリカへと旅立っていく。物語の設定上は国境なき医師団に所属し、将来もゲスト出演が予定されているらしいので、カーターファンとしても楽しみだ。

アメリカの人気ドラマといえばシチュエーションコメディ「フルハウス」も大好きだったが、その中で「ジェシーおいたん」を演じていたジョン・ステイモスが「ER」のレギュラーとなる。オリジナルメンバーのドクターはいなくなっても、ERはずっと続いていく。願わくはNHKが放映を継続してくれることを。
posted by としゆき at 15:41| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月27日

我輩は主婦である

今週からTBS系の「愛の劇場」、いわゆる昼ドラの枠で「我輩は主婦である」が始まった。宮藤官九郎が脚本を担当し、あろうことか『夏目漱石が乗り移った主婦が繰り広げるホームコメディ』作品だ。設定自体が奇抜な上に、さすがのクドカン脚本、細かなセリフ回しや個性的なキャラクター設定も面白く、録画して毎日楽しみに見ている。
漱石の乗り移る主婦・矢名みどり役に斉藤由貴、その夫・たかし役に及川光博、姑役が竹下恵子など、キャストもなかなかにはまっている。矢名夫妻は大学のミュージカル研究会同級生という設定で、ドラマ中にいきなりミュージカルのような歌のシーンが登場したりするのもご愛嬌。しかもミュージカルであればセリフを歌で伝えるのはあくまで表現上のことだが、このドラマでは実際に歌っている…という設定がまたいい。ミュージカル研究会の先輩、川平慈英演じるゆきおが経営する喫茶店では、昔を懐かしんで毎回歌い踊り明かしている。
また、妙にかわいらしいオープニングタイトルでは、夫妻がテーマ曲を歌っており、CDまで発売が決定した。久しぶりにシングルCDを買うことになりそうだ。
かつて舞台「君となら」の主役、小磯あゆみ役に斉藤由貴を起用した際、脚本家の三谷幸喜が「斉藤さんは日本一のコメディエンヌ」と表現していたが、このドラマでもその好演ぶりが光っている。厚めの唇のせいか、NHKの朝ドラ「はね駒」で福島・相馬弁が染み付いてしまったのか(?)、独特な抑揚で彼女のセリフの言い回しにはある種の「クセ」があるのだが、この種のコメディだと逆にそれが味になっている。
今週金曜日の第5回では、ついに漱石が本格的にみどりに乗り移り始めた。喫茶店のメイドには「おい、給仕。」と呼びかけ、夫の安月給には「マンションを売らねばならぬ。」と愚痴る。とりあえず全40回。昼ドラをちゃんと見るのはこれが初めてだが、これから2ヶ月はそれこそ専業主婦になった気分で楽しんでみようと「思うのだ」。
posted by としゆき at 23:57| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月07日

Happy!

浦沢直樹のマンガ「Happy!」がTVドラマ化されてTBSで放映されていた。原作初期の、主人公・海野幸がプロデビューを果たすまでが描かれており、視聴率が良ければ続編を作る気満々の演出だった。マンガ原作の映画やドラマは、なまじ原作に絵があるため、見た目のイメージを損なう恐れが大きいのだが、今回の配役は原作のキャラクターの持つ雰囲気を保ちながら、それなりにはまっていたのではないかと思う。以前テレビ朝日で放映された「動物のお医者さん」以来、久々に楽しめた。
ドラマ中、テニスの試合場面では、もちろんCGを用いてボールの軌道が描かれている。どこかで見たことがあるような演出だな…と思っていたら、最後のスタッフロールで納得。CG監督として曽利文彦の名前があった。同じくマンガ原作映画「ピンポン」で長編映画監督デビューを飾ったCGアーティストであり、映画「タイタニック」のCG製作にも携わっている。「ピンポン」での迫力ある卓球シーンを髣髴とさせるテニスシーンだったのだ。
僕は以前、彼に会ったことがある。大学院時代、同じくTBSで科学の最先端を取り上げると言う特番があり、宇宙論の最新成果を描きたいと言うことで番組制作に関係したことがある。テレビ的にはやはり迫力あるビジュアルシーンを…と言うことで、無理やり宇宙のビッグバンを定番の大爆発で表現したりしていた(ナレーションでは「そういう爆発ではない」といった解説がなされていたが)。爆発シーンというのは簡単なようでいて難しく、流体力学的にどううまくCG表現するか、という格好の題材らしい。彼が作成したこの大爆発シーンは、その後他の番組などでも再利用されているのを見かけたりしたので、なかなかの自信作だったのだろう。
最後にもう一つ。今回のドラマの監修は長崎尚志だった。「スピリッツ」誌で浦沢直樹の担当だったらしいが、現在は独立している。浦沢作品にもクレジットされていることが多く、名作「MONSTER」の外伝(?)ともいえる「もうひとつのMONSTER」では著者の一人となっている。彼については今ひとつ謎が多いが、なかなか興味の尽きない固有名詞の一人だ。
posted by としゆき at 23:28| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする