2014年08月13日

CFA

CMAとCFA』を書いたのもずいぶんと昔になってしまったが、結局その後、日本の証券アナリストを取得し、CFA受験も続けてきたのだが、今年無事にCFAのLevel IIIに合格して、「CFA協会認定証券アナリスト」(日本CFA協会による"Chartered Financial Analyst"正式訳)となることが出来た。

CFA試験は毎年6月にあるが、2011年は証券アナリストの2次試験とかぶって受験出来ず、2012年は試験自体さぼってしまったので、結局2013年にLevel II、そして2014年Level IIIと3年半もかかってしまった。僕がCFA試験を受けようと思うきっかけとなった会社の元後輩は、12月にLevel I(Level Iだけ12月と6月に試験がある)→翌6月にLevel II→さらに翌6月にLevel IIIと、最短の1年半で終えているので、彼と比べても随分と遅い歩みとなってしまった。

CFA資格を取得するにはLevel IIIまでの試験に合格し、投資関連で4年以上の実務経験を有し、さらにCFA協会(日本CFA協会じゃなくて、CFA Institute=CFAI)の正会員となる必要がある。正会員を申請する際はすでに正会員であるメンバーの推薦が必要だが、「試験結果発表後は混むから早く申し込んでおきなさい」と親切にもCFAIからアドバイスが届いたので、先の優秀な元後輩と、元同僚の方にお願いして既に入会していた。なので、試験合格の通知が来て、本日CFAIのページにログインすると既に自分の名前の後に", CFA"と表記されており、ちゃんと"Earned the CFA charter on 12 August 2014"と表示されていた。

ところでCFAIへの申請はオンラインで行うのだが、自動的にlocal society(日本の場合は日本CFA協会)へも入会申し込みするように誘導される。別にCFA資格の必須でもないし(CFAIに確認済み)、高い会費(200ドル)を払うこともないので、こちらには入会せず。日本CFA協会は、CFA受験料の奨学金を出したりしているのだが、対象を会員限定としている(つまり奨学金がもらえるかどうか分からないが、とにかく会費は払えということ)。今後CFA受験する方は日本CFA協会が必要かどうかをよく考えて決めてください。

CFA試験のLevel Iはmultiple choice、各問題に対してAからCの三択でどんどん答えていく。Level IIはitem setと呼ばれ、設定を述べた小文(vignette)が与えられ、各小文に対して同じく三択で6問ずつ答えていく。小文と言っても複数ページに渡ったり、表が含まれていたり、読解力も必要となる。そしてLevel IIIも午後はこのitem setだが、午前はconstructed response(あるいはessay)と呼ばれる形式で、要は証券アナリストの2次試験のような筆記試験だ。この形式を苦手とする受験生は多いらしく、まして英語ネイティブでない我々には試験勉強していても、自分の答えが合ってるのか違ってるのかピンと来ない。

CFA講座のあるTACのような予備校にでも行けばいいのかもしれないが、独学だった僕はこのエッセイ形式には最後まで達成感を得ることができず、Level I、II、そしてLevel IIIの午後も全部7割超の正解率だったのに、午前は全11問中3問、配点にして180点中55点分の問題で、51-70%の正解率だった(CFAIは問題毎に得点状況を5割以下、5-7割、7割超の3分類で教えてくれる)。日本CFA協会が受験生有志によるグループ勉強会を主催したりしているようなので、不安な方は参加してみてもいいかもしれない(ただし例によって会員限定だったりするので、入会のコストとベネフィットを良く考えて)。

エッセイという形式自体の難しさは別として、問題内容自体の難易度はやはり良く言われるようにLevel IIの方が高いと思う。だからLevel IIに受かると、もうCFA資格を取った気になったりするわけだが、そんな難関Level IIを突破した人の約半数がLevel IIIに落ちるわけで(今年の合格率は54%とのこと)、やはり最後まで気を抜いては行けないということなのだろう。

ちなみにCFAIは2013年から、試験日程を世界的に6月最初の土曜日と統一したようだ(その前は日本では日曜日だった)。土曜日に最後の追い込みをかけられる地域とそうでない地域の差をなくそうということかもしれないが、試験前は土曜日に勉強できないことを辛く感じたが、いざ終わってしまえば翌日曜日にゆっくりと休めるのはありがたかった。なにせ午前午後3時間ずつ、計6時間の試験なので、終わったときにはぐったりなのだ。この日程変更によって、理屈の上では証券アナリスト(日本では日曜日)とCFAを同時進行で受けられるようになったが、よっぽど体力面に自信がある人以外にはお勧めできないので、素直に順番に取っていきましょう。

とにかく、これで長きに渡ったCFA受験勉強からやっと解放されることになった。株式や不動産、行動ファイナンス等、自分の専門外も含めて、金融分野をたっぷり勉強するのは、なかなかよい経験だったが、さすがに毎回参考書を英語で1,000ページ以上読み込むのは疲れる作業であった。もうしばらくの間、英語の試験は遠慮しておこう。
posted by としゆき at 20:53| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月03日

オーストラリア利下げ

今週火曜日に、オーストラリア準備銀行(RBA = The Reserve Bank of Australia)が50bps(=0.5%)の利下げを行った。マーケットでは25bpsがコンセンサスだったので、ちょっとしたサプライズ。為替市場でもAUDは瞬間的に売りで反応した。

で、東京時間1時半にその結果が出た後、会社の若手が「RBAってやるときは50ぐらいやるから、可能性としてはありうる」と言うのに対し、この道20年近いベテランの先輩曰く「そうかな。刻む人という印象があるけど」との由。という訳で早速見てみよう。

RBA_CTR.gif

90年代とかの「旧世紀」はやっぱりインフレ退治で金利も高かったんだなーと実感出来る。金融ではおなじみの「70の法則」という物があって、それは年率rパーセントで運用した時に倍になるまでの期間は、おおよそ70/r年という物。グラフを見ると1990年末とかは12%もの高金利だから、6年くらいで倍になったのかーと、超ウルトラ低金利の現代日本に住む身としては隔世の感(って、本当に隔世なんだけど)。もっとも、ここでいう"Cash Target Rate"というのは短期の金利なので、本当はその金利で5年も6年も運用できないのだけれど、それはさておき。

ちなみに70の法則はlogの近似から簡単に出るのだけれど(高校生の方、是非どうぞ)、金利がここまで高いと1次近似では近似が悪くて、「70の法則」じゃなくて「72の法則」の方が正しかったりする。ので、上の計算で約6年というのはかなり良い見積もりなのだ(正確には〜6.116年)。いろいろな金利に対して、年率複利運用が倍になるまでの期間と、「70/72の法則」による近似をグラフにしたものが下の図。

LawOf70.gif

これだけじゃよくわからないので、正しい値と両近似との差を見てみると、「70の法則」の近似が大変良い事、それでも5%を超えてくるくらいから「72の法則」の方が近似が良くなる事、が分かる。いずれにせよ、概算としては実に使いやすい法則なのだ。

LawOf70_diff.gif

閑話休題。で、このRBAの金利はほぼ毎月(原則第1火曜日)開催される金融政策決定理事会で議論されアナウンスされるのだが、各会合毎の変化幅を見てみると…

RBA_CTR_Change.gif

金利の絶対水準が違う90年代はともかく、今世紀に入ってからはほぼ25bps毎の微調整が多いかな?という気はする。リーマンショックのあった2008年以降を見てみると…

RBA_CTR_Change_2008-.gif

なるほど、あの狂乱の時代直前にこの業界に入った人からすると、50bps、100bps、あたりまえ〜というバナナのたたき売りをする人に見えてしまうのも仕方がないか。ただ、リーマンショックはあっても、好調中国経済に引っ張られて好景気を享受したオーストラリアは、2009年には利上げモード(金融引き締め)に入っている。思えばあの頃はアメリカもいつ超金融緩和から脱するのかという「出口政策」の議論がされていたけれど、欧州危機の中で「一体何の話だったんだろう」という、これまたたかだか数年前なのに隔世の感…

そんな中、中国経済の減速も議論される今、市場の一歩先を行く50bpsの利下げ。日銀に緩和しろ、しろという外野の声もうるさいけれど、それでも金利が3.75%もある国とは比較にならないからなぁ。日銀は物価見通しに(市場のコンセンサスよりはずっと)強気のようだけれど、日本で普通預金金利に1%なんて数字を見る事が出来るのは一体いつのことやら。
posted by としゆき at 23:48| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月09日

証券外務員更新研修

今日は朝から証券外務員の資格更新のため、会社ではなく茅場町へと向かう。9時から開始だったのだが、乗り換えた東西線が遅延してしまう。僕たちの車両ではなく、後続車両で扉に荷物を引きこまれた人がいるとかで、そのままだと運行間隔があいてしまい、後続車両が混み過ぎるので、調整のために停車という話。おかげで会場についたときには9時を過ぎてしまい、受付の人に「受講できません」等と言われて朝から気分が悪い(遅延証明で事なきを得たのだが)。

証券外務員はその名が示すように証券会社の営業マンが必要な資格のように聞こえるかもしれないが、実際には内勤でトレーディングをしていたりしても必要となってくる。1種と2種があるのだが、僕たちの頃はペーパー試験で4月に入社後、ロンドン研修から帰ってきて11月になるまで1種が取れなかったりしたものだが、最近はコンピュータでの試験となっており、入社前に1種まで取らせてしまうらしい。

そして5年に1度更新の必要があり、今回もその一環。昨年6月に「向こう1年以内に更新研修を受講しなさい」という案内が来ていて、そのメールを自分のアドレス宛に転送を繰り返していたのだが、いつの間にか締め切り近くになっていた。そうやって考えると去年は時間の経つのが早かったんだなぁ〜。

研修はヘッドフォンを着けてコンピュータが喋りまくるのをひたすら聞き、途中理解度チェックの○×テストに答えるという形式。前記のようにご機嫌ナナメでもあったので倍速再生でもして時間の短縮をしたかったがそれもかなわず、2時間弱缶詰め状態。

研修内容は新規な物はなく退屈極まりないが、途中、暴力団関係者のような反社会的人物とは取引をしてはいけないという話題で、「こういう人は暴力団の事が多い」という例で、「高級外車を乗り回し、派手な服装の女性を侍らせている」というのがあったのが笑えたくらいか。

イースターのためにロンドンが金曜、月曜とお休みなので今朝にしたのだが、良く考えたら金曜日午後に入れて直帰してしまえばよかった(実際に会社の同僚はそうしてた)。先週末の雇用統計が悪かったせいで相場は株安・円高・債券高に動いたが、終わってしまえば静かな物。遅れて参加したランチタイム・ミーティングも出されたお弁当を食べてるうちに終わってしまったし、なんだか拍子抜けな週初ではあった。
posted by としゆき at 22:52| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月06日

2位じゃダメ

今朝、CFA受験向けテキスト出版でおなじみのKaplan Schweserから"Breaking News"と題したメールが届いていた。それによると、長らくKaplan SchweserのライバルでもあったStalla(こちらもCFA向けテキストでおなじみ)が、Schweserに資産売却を行うという。

----------(引用開始)----------

On December 2, 2011, DeVry, Inc. - Stalla's parent company - announced the sale of Stalla's assets to the Schweser Study Program - an operating unit of the Kaplan University School of Professional and Continuing Education.

----------(引用終了)----------

僕自身はSchweser派だし、実際にユーザー数はSchweserの方が多いようだから特に大きな混乱はないかもしれない。CFA受験をするためには、CFA Instituteの教材テキストを購入する必要がある。ところがこのテキスト、膨大な分量でとてもとても読んでいられない?ということで、Schweserのような協力会社の出版する補助テキストを購入、勉強する人が多い(というか、ほぼ全員そうなのでは?)。

Stallaは例が豊富で分かりやすい反面、まとめ度合いが低くて勉強が大変(∴本来のテキストでなく、補助テキストを使う意味がない)という意見があったようだ(僕は使ってないので伝聞だが)。そういう事もあって、ユーザー数に差が付いてしまい、今回の撤退になったのかもしれない。インターネット等での口コミ情報は、一度そうした評判がついてしまうとなかなかひっくり返せないし。やっぱり「2位じゃダメ」なんです。

補助テキストのライバル関係と言えば、日本の証券アナリストでも、経済法令研究会、TAC(公務員試験等でもおなじみ)、そしてABC証券アナリスト受験対策室という3大テキストが存在する。僕が以前受けた時(『証券アナリスト』参照)は、TACというと公務員試験のイメージが強いし、ABCは聞いた事もなくてなんか良く分からないしで、なんとなく経済法令研究会版を1次試験から使っていた。ところが、経済法令研究会は何故か2011年2次試験用テキストを出版せず、さらに本屋に在庫として残っていた2010年版も緊急回収していた。何か誤植でも見つかったんだろうか?仕方ないので2次試験からTAC版に乗り換えたが、これは喰わず嫌いで意外に使い易かったことが判明。やはりテキストとか参考書、問題集というのは、どれが良い悪いというのもあるかもしれないが、選んだものをじっくり使い倒す方が重要なのだろう。

CFAの次回の試験(Level II)は来年6月の予定だが、まだ何にも手をつけてない。そういえばSchweserからテキストやCDも届いていたし、ご丁寧にLevel Iの復習まとめテキストまでついてたなぁ?。またあの膨大な英語と計算問題に振り回される日が来るかと思うと今から気が重いけど、頭の体操だと思って頑張ろう。
posted by としゆき at 20:01| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月31日

納得いくまで

本日、8月4日以来の政府・日銀による為替介入が入った。今朝もシドニー市場で対米ドル最高値を更新していたが、この介入で一気に3円程度持ち上げた、かなり気合いの入った介入のようだ。

南アフリカ・ランド暴落の謎』での話もそうだが、早朝(しかも月曜日)のこの時間はマーケットも薄く、先週来の動きで介入はないと見越した筋の売りが結構入っていたようだが、そこに冷や水を浴びせるような介入となった。

安住財務相は「納得いくまで介入したい」とコメント。その後、ドル円は79円20銭前後にぴたっと張り付いたままだ。噂によると、介入玉によると思われるビッド(買い)の注文が、数万本(一本は100万米ドルだから、円で言うと兆円単位)が入っていて、おいそれと売れる雰囲気じゃないらしい。中長期的には分からないが、売り手も様子見なのではないだろうか。

7919bid.gif

一部では、「納得行く」=「なっとくいく」=「79.19」円なんて話も出ていたが、誰かこれを外国人投資家に分かりやすく説明してあげて下さい…。
posted by としゆき at 14:46| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月22日

マイナス金利2

アメリカ紀行とスイスフラン金利報告が交互に続くが、本日はスイスフラン。先週金曜日の8月19日に、いよいよスイスフランのS/N(スポットネクスト)、及び1週間LIBORがマイナスになってしまった。そして週明けの本日22日は、2週間金利までマイナス圏に突入している。

CHFLIBOR-veFixing.gif

9月満期のスイスフラン3ヶ月金利先物は、荒っぽい動きをしているが、以前として100超え(=マイナス金利)状態。

CHFfut20110822.gif

9月19日が取引最終日だが、マーケットは3ヶ月LIBORのマイナス化はないと踏んだか、はたまた単なる利益確定の売りか。流動性は非常に低いようだが、これから1ヶ月、引き続き注目。
posted by としゆき at 20:22| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月18日

マイナス金利

アメリカ紀行の続きを書きたいのだが、マーケットが動いていて、備忘録も兼ねたこのブログに書きたいネタが尽きなくて困ってしまう。と言うわけで、『最強スイスフラン』に続いて、スイスフランの話。スイスフランが超低金利だと言う話を前回書いたが、英国銀行協会(British Bankers Association)が発表するLIBOR(=London InterBank Offered Rate)を見ると、たとえば1週間金利なんかは既にゼロ%になってしまっている。LIBORはリーマン・ショック後、その指標性について批判もあったが、原則として「銀行間でその通貨を貸すとしたら、要求する金利水準」と言う意味だから、ゼロ金利でお金を貸す人がいる?と言う状況になってしまっている。

chflibor.gif

LIBORはいくつかの銀行(パネル行)が提出した金利を平均して算出されるのだが、昨日の1ヶ月LIBORを見てみると、クレディスイスが何とマイナス金利を提示している。

chf1mlibor.gif

先日も触れたスイスフランの短期金利先物、昨日100.20まで取引されてしまっている。

chffut10020.gif

金利先物は3ヶ月LIBORに連動するので、これ以後クレディスイス(及び他行)がどういう金利を提示してくるかに注目が集まる。

やや技巧的な話になるが、マイナスの金利と聞くと普通は不思議に思うものの、2通貨の絡む取引(クロスカレンシー取引)では、割と普通に起こる。ドルを持っている人が、それと元手にスイスフラン調達した場合(あるいはその逆)、ドルを貸してスイスフランを借り、途中ドル金利を受け取りながらスイスフラン金利を支払って、満期にドルを取り戻してスイスフランを払い戻す…と言う取引がある。このとき、業界標準としては、3ヶ月のドル金利(米ドルの3ヶ月LIBOR)に対して、3ヶ月のスイスフランLIBORプラスマイナス何%、と言う形で価格が提示される。3ヶ月ドルLIBORは0.3%程度だが、このプラスマイナスの数値(スプレッド)がいくらかと言うと、1年間(だから3ヶ月金利を4回交換する)で、-70ベーシスポイント(bps、1bp=0.01%)となっている。

SFBS1.gif

だから、スイスフランを貸してドルを受け取った人は、1年の間、ドルLIBORの利息を払いながら、スイスフランLIBORマイナス0.7%を受け取る…のだが、上の表にもある様に、3ヶ月スイスフランLIBORは0.03%、つまり3bps程しかない。そこから70bpsを引けば当然マイナスだから、この取引を行うと、ドル金利を払いつつ、実際にはスイスフランの金利も払う(マイナスの受け取り=プラスの支払い)となるのだ。

日本円についても、この1年スプレッドの歴史を見てみると、邦銀危機でジャパンプレミアムが要求された1990年代後半、リーマンショック直後、そして現在の欧州危機で、大きくマイナスに動いていることが分かる。上に見たような出来上がりの「マイナス金利」を利用して、マイナスの円金利払いを行って小銭を稼いでいたような投資家が、こうした急激な動きでポジションの解約を余儀なくされ、それがさらに相場の変動性を高めていると言う事実もある。

JYBS1.gif

アメリカ旅行から帰ってきて、仕事に復帰した8月第2週からいきなりとんでもない大嵐に直面させられたのだ。ヘッジファンドを始め、この動きで大きな損失を出した向きもあるようだが、最近のマーケットはどこに地雷が埋まっているか分からない状態で、精神衛生上、あんまりよくない。ヨセミテの景色に癒されていたのが遠い昔のようだ…。
posted by としゆき at 21:48| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月11日

最強スイスフラン

ここもとの世界金融危機の中で、スイスフランが他通貨対比強くなっている。日本人は米ドル円に注目しがちだが、たとえばスイスフラン円を見るとこんな感じ。

chfjpy.gif

管理通貨制度に対する不信感が広がる中で、金が史上最高値を更新というのもニュースになるが、金先物というのは普通はドル建ての値段で取引される。現在は1トロイオンスが1800ドルとか。

goldfut.gif

ところが、この金先物の値段をスイスフラン建てに翻訳してみると、実はそんなに上がっていない。

goldfutchf.gif

通貨への不信任が金価格を押し上げていると言う中で、スイスフランだけが金と並んで買われている。ちなみに円高、円高と叫ばれる円建てで金先物を見ても、やはり価格は上昇している。

goldfutjpy.gif

そんな中、スイスフラン短期金利先物が100を超えたとして、市場(の一部)で話題になっている。短期金利先物というのは、普通は3ヶ月金利をパーセント表示して、100から引いてやった値段で表現する(金利先物価格=100−3ヶ月金利[%])。これは「金利が上がると債券価格が下がる」と言う債券数理の基本に沿って分かりやすくするため。ちなみに円の短期金利先物は、今年9月満期の3ヶ月物で99.68、つまり3ヶ月金利が0.32%となっている。スイスフランの同じく9月満期先物を見てみると、100を一気に超えてしまっている。

chffut.gif

通常は金利の非負制約があるから、この先物の値段は100でキャップされていると考えるのが普通。かつては円短期金利先物でも100が取引されたとかされないとか言う話しがあったが、それは主にオプションモデル上の制約だった(マイナスの金利を許容するモデルを使っていた人がいたから、リスク管理上泣く泣く上限と思われる100円を買っていた?)と言う話。ところがスイスフランの先物は100を買うどころか、そこからさらに買い上げられている。なかなかすごい状況なのだが、果たして市場はマイナス金利を予想しているのだろうか?

ところで、為替のフォワード(先渡し)取引と言うものがある。以前、『1ドル=100円』でも書いたが、2通貨のフォワードレートは、それぞれの金利で決まる。逆に言うとフォワードレートが分かれば、市場が示唆する金利(差)が分かる。

本日、スポットでは1ドルが0.73スイスフラン程度なのに対し、フォワード市場では1ヶ月先のレートを-11.5(為替レートで言う、-0.00115)として建値されていたと言う。つまり1ヶ月先レートは0.73-0.00115=0.72885。このレートの落差はドルとスイスフランの金利差から来ると考えると、12ヶ月では-0.00115 x 12 = -0.0138、スポットが0.73だから、金利で言うと-0.0138÷0.73=-1.9%ということになる。ドルの1ヶ月金利は大体0.2%程度だから、為替フォワード市場はスイスフランの1ヶ月金利を、-1.7%と計算していることになる!

というわけで、スイスフランの先高感が高まり、フォワード市場でドル売り・スイスフラン買いが入ると、フォワードトレーダーはヘッジとしてスイスフランの短期金利先物を買わないといけない。これがこの100超えの原因、なのかもしれないが、真実は果たしてどうなんでしょうか?。

スイス国立銀行(SNB)による必死の口先介入も続いているが、スイスフランが現時点で世界最強通貨であるのは間違いない。金融危機の根は深そうなだけに、スイス市場にも引き続き注目。
posted by としゆき at 21:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月27日

証券アナリスト

今日家に戻ってくると、日本証券アナリスト協会から封筒が届いていた。6月に受験した第2次試験の結果通知だろうが、『CMAとCFA』にも書いたとおり、第1次試験の結果はシールをはがすタイプのハガキ。今回は何やら書類が入った封筒が来ている…と言う事で、早速開封してみると「第2次試験合格通知」が。通信教育講座も含めて2年弱の課程が無事終了。あとは入会金1万8千円なりと、年会費1万8千円を納めれば晴れて「公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員」と言う事に。

業界歴も10年になって、今更証券アナリストと言う話もあるが(最近は学生のうちから受ける人も多い)、まあ総合的には受けてみて良かったかな、と思う。証券アナリスト試験では最近統計学のウェイトが上がっていたり、一般人には馴染みの薄い債券数理やデリバティブの話題も多いが、幸いにして理系出身・金利デリバティブ担当としては、その辺はさほど苦にはならず、大学時代学ばなかった経済学や会計・財務分析の勉強に注力する事が出来た。証券アナでも受けないと体系的に学ぶと言う事はなかっただろうから、これは役立った。また、いわゆるコーポレート・ファイナンスも(触りだけとは言え)なかなか興味深かった。同じ金融でも市場部門にいると、あんまり触れる機会もなかったし。

ところで第2次試験は記述式なのだが、午前、午後と3時間半ずつ、計7時間書きっ放し。3時間半もの試験時間じゃ飽きちゃうんじゃ、という心配は無用。書くことが余りにも多いし、答案用紙の紙質が悪くて消しゴムも使いまくり。どちらかと言うと時間が足りない。試験を受けるときは、何はなくとも素早く最後の問題まで解いてみて、おもむろに引っかかった問題を潰していく…と言うタイプなので、ここまで余裕がないと精神的に辛い。本当に手を動かし続け、腱鞘炎というか、手が攣りそうになった。普段キーボードばかりで筆圧が弱くなっていることを、改めて思い知らされる。

紙質といえば、証券アナリスト協会には是非反省して改善して欲しい(ってもう試験受けないけど)。いや、質としては実はむしろいい紙を使っているのかもしれないが、鉛筆(シャーペン)の乗りが言いように、わら半紙の様な、ザラっとした紙質の方が計算も解答もしやすい。ボールペンも可だったから、それで記入する人にはいいのかも知れないが、さすがにこの手の試験でボールペンでいきなり解答する人は少ないだろうし。

ところで、伝統的な株式や債券数理の問題なら何を勉強すればいいのかある程度イメージも沸くが、テキスト読んだだけでは何していいのか分からないのがクレジット・デリバティブと行動ファイナンス。過去問を見てみると、いくら通信教育テキストが試験範囲とは言え、そんな細かいところまで覚えてないよ…と言う問題が出ていた(ように思う)。今年はデフォルトの推移確率行列。これは確率統計ではお馴染みの概念だから、逆にクレジット・デリバティブ特有の問題ではないし、どこまでを丸暗記させて、どこを試験の現場で考えさせるのか、正直、出題する方も困っているのではないか。

参考までに、証券アナの会計分野のテキストとしては、アナリスト協会推薦図書になっている『財務会計』(斎藤静樹)よりも、別の某試験参考書に指定されている『財務会計講義』(桜井久勝)の方が分かりやすい。簿記を全く知らない人は、通信教育テキストで仕分けについて学んでからの方がいいけれど。

推薦図書の中では『国際金融論講義』(深尾光洋)も良かった。推薦図書は協会を通じて購入すると割引になるけれど、玉石混交なので、推薦されるものを何でもかんでも買うと言う事はお勧めしない。

まあ、合格通知で肩の荷がちょっと下りたが、CFAはまだまだ途中だし、別の試験も受けようと計画中だし、人生一生勉強なのです。
posted by としゆき at 21:00| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月18日

G7協調介入

午後2時46分に地震が起こったのは、ちょうど一週間前の金曜日。日々伝えられる被災地の状況は胸が痛むばかりだが、余震や原発のニュース等、東京にいても落ち着かない状態が続く。帰宅難民が発生したり、停電が起こったり、地震後に土日を挟んでいたのが不幸中の幸いだと思えるほどだったが、今週はマーケットも大荒れだった。

週明けの月曜日に株が売られたのは自然だとして、原発危機が深刻になった火曜日には、ブラック・マンデー、リーマン・ショックに次ぐ、史上3番目の下落率。その後も日替わりで上下を繰り返し、ボラティリティは下がっていない。

NKY20110311-18.gif

さらに為替は木曜朝に、ドル円の史上最安値(円の対米ドル最高値)79円75銭をあっという間に突破、テレビで「モーニング・サテライト」を見ている時も、78円台、77円台、76円台と真空地帯を落下し、新たな最高値76円25銭(Bloombergによると76円36銭らしいが、この辺は情報ベンダーによって違う)へ。保険金支払いを余儀なくされる生保・損保を始め、国内投資家によるリパトリエーション(資金国内回帰)という後付けのストーリーも語られたが、やはりヘッジファンド等の仕掛け売り説が根強い。また、朝方のニュージーランド・オーストラリア時間はマーケットが薄いことから、80円割れにストップのオーダーを置いていた個人投資家を狙った、いわゆる「ストップ狩り」と言う話も出ている。

ところが、本日18日、日本時間朝7時から始まったG7の電話会議を受け、日米英欧加(要はG7)が協調介入を決定、一気に81円台まで持って行った(ちなみに、ロイターの記事では、介入開始直後のコメントで野田財務大臣がイギリスの名前を出してなかったようだが、言い忘れたのか、ロイター側の間違いか)。

USDJPY20110316-18.gif

各中銀勢揃いで、それなりにインパクトのある決定だったが、ロイターに流れていたみずほ証券・鈴木健吾氏のコメントがふるっている(彼もイングランド銀行に言及してないのは、野田大臣の発言を踏まえてのコメントだからだろう):

----------(引用開始)----------
09:23 18Mar11 RTRS-G7こうみる:これで投機筋の息の根止まる=みずほ証券 鈴木氏

 <みずほ証券 為替アナリスト 鈴木健吾氏> 
1995年のときも「秩序ある反転」声明と協調介入で相場は反転した。過去を見ても、介入で流れが変わることが多かった。これで投機筋の息の根は止まるだろう。日本の単独介入だったらここまで上昇しないし、再び80円を割ってしまっていたと思う。FRB(米連邦準備理事会)にECB(欧州中央銀行)、カナダ中銀も参加するということで、このメンバーに喧嘩をしかける投機筋はいない。日銀の2発目の介入も予想されるし、今夜にはECBとFRBが介入するだろう。投機筋はもうロングで仕掛けてきていると思う。
(東京 18日 ロイター)
----------(引用終了)----------

と言う訳で、「投機筋の息の根」は止められてしまったらしい。彼は何か「投機筋」に恨みでもあるんでしょうか(もっとも、彼も言うとおり、ロング=買い持ちにひっくり返した動きも出ているようだから、まだまだ「投機筋」は健在かもしれないが)。

この介入を受けて、株高、債券安が進み、午後3時現在では、福島原発もそれなりに前進が見られそうだというニュースを受けて、本日のマーケットは小康状態。ヨーロッパ時間にはイングランド銀行を始め、ドイツ連銀、フランス中銀、イタリア中銀が為替介入していた。スイス中銀はノーコメントだったが、ニューヨーク時間にはFRB(実際のオペはニューヨーク連銀が行うと思うが)・カナダ中銀も介入するだろう。

緊張とストレスで非常に大変な一週間だったが、とりあえず一息ついた円高同様、とりあえず3連休、体と頭を休めることにしよう。
posted by としゆき at 19:57| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月11日

東北地方太平洋沖地震

本日最大のニュースは、「東北地方太平洋沖地震」だろう。後場(午後のマーケット、債券先物だと12時半〜15時)も終わろうとする14時46分、いきなり大きな揺れを感じて、職場のあちこちで「あ、地震だ」と言う声が聞こえる。ところが、いつまでたっても揺れがやまず、それどころかどんどん揺れが大きくなり、徐々に不安が高まってくる。余りの揺れのひどさに、思わず会社の椅子に備え付けのヘルメットを取りだして用意してしまう。ロイターの速報で東北地方が震源地と聞いて、とりあえず直撃を避けられたことに感謝するも、東京でこれだけの揺れということは、東北がどうなっているのか、心配になってくる。

本日の日経平均、長期国債先物、ドル円相場のチャートを見ても分かるように、地震をきっかけに大きく相場が動いている。株は当然売られ、債券はいきなりのラリー。為替は円安に飛ぶも、地震から5時間ほど経過した現時点では円高方向に振れている。

20110311NKY.gif

20110311JGB.gif

20110311USDJPY.gif

まだテレビ報道等を詳しく見ていないので被害の程度は分からないのだが、マグニチュードは8.8だということなので、関東大震災や阪神淡路大震災よりも大きいらしい。マグニチュードは1違うとルート1000倍エネルギーが大きくなるから、マグニチュード7.3だった神戸の地震に比べても、10の2.25乗≒178倍ということになる。もちろん、マグニチュードは不確定性があるし、実際の地震の被害にダイレクトに関係するわけじゃないが、とてつもなく大きな地震であったことは間違いない。

うちの会社が入っているビルは、普段の避難訓練ではすぐに外に出なさいとアナウンスされる(19階から階段で!)のだが、本日に関しては余震もひどい事から、ビル内の方が安全だから出ないようにということだった。また、訓練時は英語でもアナウンスが入るが、今日は日本語のみ(数時間たってようやく英語も始まったが)。もっとも、やはり地震に慣れないからなのか、外国人軍団はアナウンスなんか関係なく避難してしまったのだった。

取引を媒介するブローカーからも、避難命令が出たのでいったん離席しますとスピーカーから流れてきたり、日本国債取引仲介最大手のBB(=Broker's Broker)は、地震後に取引を停止していた。オプションの行使(金利物だと、15時が通告期限な事が多い)をしようにも、電話がつながらないといった状況で、混乱したりもしたが、僕の周囲では怪我人も出ず、特に大きな混乱もなかった。

もっとも、タクシーは捕まらない、道は大渋滞、地下鉄もJRも止まっているという状況で、帰宅難民が予想され、僕の両隣の2人は急遽、会社近くの自転車屋さんにかけつけて見事自転車をゲット。なんでも最後の2台だったそうで、そのあとに来た女性が「私、立川なんですけど…」と泣いていたらしい(ゲットした先輩曰く、「立川なんて帰ろうとする方が間違ってる」)。19階から階段を下り、ギリギリのタイミングで買いに出た二人はさすがトレーダーというべきか…。もっとも、(他の用事があったからだという話だが)タクシーを手配していた僕の上司の方が1枚も2枚も上手な気もするけれど。
posted by としゆき at 20:22| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月23日

Too Big To Fail

アンドリュー・ロス・ソーキン著、加賀山卓朗訳、「リーマン ショック コンフィデンシャル」(邦訳上下巻、現代"Too Big To Fail")を読んだ。今までにもいろいろなリーマン関連本やドラマの話をして来たが(『リーマン関連いくつか』参照)、この本はそれらの中でも出色の出来。今回の金融危機は必ずしもリーマン・ショックだけが全てではない(し、そもそもまだ終わってないかも知れない)のだが、リーマンを中心とした現時点での総まとめとしては必読(この本は、TARP法案により、ウォール・ストリートの投資銀行に公的資金を投入する所までが描かれている)。作者自身も参考文献としてあげているが、ロジャー・ローウェンスタインの『天才たちの誤算』(原題は"When Genius Failed"、『最強ヘッジファンドLTCMの興亡』として文庫化されている)が面白いと思った人は、そのリーマン版と思ってもらえれば感じがつかめるかも知れない。

上下巻で800ページ近いが、面白くて一気に読ませてしまう。冒頭のプロローグで描かれるJPモルガン・チェース経営陣による電話会議。CEOであるジェイミー・ダイモンの黙示録の様な台詞が始まる…『「次の手順でいく」彼は続けた。「ただちにリーマン・ブラザーズの倒産に備えてほしい」間をおいた。「そして、メリルリンチの倒産」また間を置いた。「AIGの倒産」また間。「モルガン・スタンレーの倒産」最後にひときわ長い間を置いて、「それから可能性として、ゴールドマン・サックスの倒産に備える」電話の向こうでいっせいに息を呑む音がした』。ダイモンは、この本の、ある意味で主人公ともいえる(もちろん、リーマンCEOだったディック・ファルドはもう一方の主人公な訳だが)。

その後、上巻は各章毎に、各社が次々と危機に瀕していく。リーマンが、メリルが、AIGが、ゴールドマンが、ファニーメイとフレディマックが…。著者はニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであり、その意味ではリーマンのインサイダーではなく、第三者として、膨大な取材に基づく金融危機の俯瞰図を描き出す。今まで何度も触れているが、「信用」と言う物に依拠する金融ビジネスは、いったん歯車が逆回転を始めると、どうしたってその流れを止める事が難しくなる。生き残った投資銀行各社も、文字通り手元流動性の資金繰りに四苦八苦し、「あと3日で資金ショートしてしまう」なんていう状況に陥ったりしている。上で引用したように自分達も必死だったとは言え、JPモルガンが追証をかけて他社を追い込んだりもしているわけだが。

下巻の一つのクライマックスは、三菱UFJによるモルガン・スタンレーへの出資。出版元の早川書房による新聞広告では、三菱が金融危機を止めた、みたいな宣伝文句もあったが、さすがにそれは言い過ぎとしても、モルガン・スタンレーにとっては干天の慈雨だったのは間違いないだろう。疑心暗鬼うずまく金融界で生き延びる(=息の根を止められない)ためには、一日でも早く資金を確保したことをアピールする必要があったわけだが、20008年10月13日の月曜日は、アメリカではコロンブス記念日、日本では体育の日で銀行休業日であった。そのため、何と90億ドルの小切手を切ることになる。下巻330ページに掲載されているその小切手のコピーがこちら。

BTMU2MS.jpg

…という事だそうだが、結構ちゃっちいイメージがするのは僕だけ?本物なんだろうか。

それはさておき、物語はその後、上にも書いたようにポールソン財務長官(彼もまた、もう一人の主人公だ)によるTARP資金活用へと進んでいく。リーマン・ショック自体はここで一幕を終えるのかも知れないが、まだまだ金融危機は完全には癒えていない。第二、第三の「〜コンフィデンシャル」が必要とならないことを祈るばかりだが、著者には是非、その後の進展も含めて続編を描いて欲しい。
posted by としゆき at 21:30| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月14日

マーケットどころじゃない?

本日の相場は本当に静かだった。日経平均こそ174円60銭上昇しているものの、国債先物はわずか2銭の上昇、為替相場も全般的に静か(もっとも、先週金曜日の海外時間に円安になっているので、東京引け値から見ると多少動いているが、それも誤差の範囲)。既にみんなの気持ちは、今夜11時のワールドカップ、日本対カメルーン戦でいっぱいのようだ。

そもそも、朝会社に来てみると、ロンドン時間のメールがやたらと少ない。トレーダーによるマーケットコメントも、書いてる人が普段より少なかったり、書いててもえらく簡単だったり、11日の開幕日にはみんな気もそぞろだったんでしょう。

昨日は、オーストラリアがドイツに4対0と完敗。シドニーの反応は…と思ったのだが、本日14日は女王誕生日でお休み。日本も明日の仕事を気持ちよく迎えられるように、ここは何とか初戦勝利で景気付けしたいところ。

そんな中、今日の閑散なマーケットで一部話題となっていたのが、業界の某有名人(某社社長)が、ワールドカップ観戦のために南アフリカに駆けつけ、メディアの取材を受けていたこと。うちの会社からも休暇を取って応援に行っている人がいるが、彼らには現地で是非、代表にエネルギーを送ってほしい。テレビ観戦していてもうるさく感じるほど観客席のブブセラの音は大きいようだから、負けないように大声を出して。

日本対カメルーン戦、キックオフはあと、一時間ほど。頑張れ、日本。
posted by としゆき at 21:58| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月29日

CMAとCFA

今日、出先から家に帰ると日本証券アナリスト協会から葉書が来ていた。実は先月一次試験を受けていたのだが、そろそろ合否通知が来る頃…と思って、封印されている葉書をめくると

『2010年第1次試験春試験結果 開示請求書』

と書いてある。不合格のときに限って、自分の成績がどのくらいの位置にあるかを訪ねる事ができるというものだ。それなりに自信はあったのでびっくりしたのだが、反対側をおめくるとちゃんと、受験した三科目(証券分析とポートフォリオ・マネジメント、財務分析、経済)とも合格と言う通知が来ていた。と言うわけで、来年の二次試験に向けてまた勉強しないと。

ちなみに試験は青山学院大学だったのだが、キャンパスの中に入ったのは初めて。お洒落なイメージとは違って意外に(?)古い建物が多かった。

さて、証券アナリストは、試験だけ受けて合格すれば良いというわけにいかず、一年弱続く通信教育講座を受講しないと試験すら受けられない。合格しても高い年会費を払い続けないと登録すらしてもらえない。ぼったくりも良いところなのだが、まあ我慢するとしよう。

日本の証券アナリストはChartered Member of the Securities Analysts Association of Japan、略してCMAと呼ばれるが、金融の本場アメリカにはChartered Financial Analyst、略してCFAという資格がある。アメリカ国内の資格だが、世界中から受験者が集まり、試験のレベルもそれなりに高いので、資格保有者は名刺にCFAと入れていることが多い。それなりにステイタスなのだ。日本の証券アナも名刺に「日本証券アナリスト協会検定会員」と入れられるが、持っていても敢えて入れない人も多いようだ。

で、以前は日本の証券アナを持っているとCFAのlevel Iは無試験でパスできていたらしいのだが、喧嘩別れでもしたのか今はその制度はない。さらに、CFAの試験は毎年6月上旬(level Iのみ12月にも)だが、証券アナの二次試験はわざと同じ日にぶつけてくると言う。知り合いは証券アナ二次試験を受けようとしたのだが、CFAを優先して二次試験を放棄したらしい。いい迷惑だ。

と言うわけで、僕もついでに12月のCFA level I試験でも受けてみようかな、と考えている。で、来年6月には証券アナ二次試験を受けて、再来年にはCFA level II、さらに翌年level III…と言う遠大な計画。もっとも、各レベル最低250時間は勉強しろ等と言われているようなので、忙しさに負けて挫折したりして。
posted by としゆき at 17:26| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月19日

イングランド優勝?

昨日マーケットでちょっと話題になってたのが、JPモルガンの出したレポート"England to Win the World Cup!"。同社の株式リサーチが普段使っている定量モデルをサッカーのワールドカップに適用し、優勝チームはイングランドと予想したもの。

投資の世界では、何にどう投資するか?を決定するために、様々な分析手法が用いられる。純粋にバランスシートや業界情報を分析する「ファンダメンタル分析」もあれば、過去の値動きのチャートを解析する「テクニカル分析」、そして様々な数値的・統計的データを用いるクオンツと呼ばれる定量的なアプローチが用いられることがある。

こうした数値的手法は何も金融に限った話ではない(『相対価値の絶対計算』参照)。今回のレポートは、クオンツ手法をサッカーに当てはめてみたもの。よくシンクタンクが○○の経済効果は○○円…等としてニュースになったりするが、そうした「宣伝」効果を狙ったものだろう。もっとも、イングランドが負けた時には「当たらないじゃないか」と言う批判が起こるリスクもあるが、そこはあくまでお遊びとして、簡単な読み物ですよ、と言い訳も出来る。悪くないやり方かもしれない(何より、こうしてついつい読んじゃう読者も出てくるわけだし)。

上で分析手法を分類したが、もちろんそれらは独立・背反と言うわけではない。個人的にはテクニカル分析はあんまり好きじゃないが、彼らのコメントを聞いていてもきちんとファンダメンタル情報を把握しているのが分かったりする。クオンツも、時として余りにも衒学的で(何をしているのか分からない)「ブラック・ボックス」なんて言われたりするが、それでも多くのクオンツ分析はファンダメンタルな情報を取り入れている(数値化して統計的に扱う所に力点が置かれる訳だが)。

さて、今回のJPのレポートは、実際の株式の分析とワールドカップ分析を比較している。考慮した要素は次の通り(カッコ内は株式版の要素)

- ブック・メーカーの掛け率、FIFAランキング(PER等)
- それらの最近の変化トレンド(超短期の株価トレンド)
- 過去のワールドカップ成績、最近のFIFAランキングスコア獲得状況(市場センチメント、アナリストによる推奨等)
- ブックメーカー間での一致度合い、勝率(ROE等)

少し分かりにくいが、最後の部分がファンダメンタル分析に相当する…と主張されている。そして、これらの要素を国別に計算し、各要素に重みを加える。実はここがポイントで、どのような要素を選ぶかと共に、どのような重み付けをするかが結果を大きく左右する。この部分まで「ブラック・ボックス」でやることも出来るが、この辺の匙加減がアナリストの腕の見せ所(「鉛筆なめて決めてる」等と揶揄される場合もあるが…)。

結果的に、JP式でもっとも高評価を得たのはブラジルなのだが、実際のワールドカップの組み合わせでシミュレーションしてみた結果、優勝するのはイングランドと出たと言う。ちなみに上位3チームはイングランド、スペイン、オランダ。この3カ国が優勝する確率は52.5%と言うことらしい。ここでオランダがポルトガルだったりしたらPIGSとかSTUPIDとかの関係で思惑を呼んで面白かったのに。

ところで我らが日本はと言うと…ブラジルが1位となった純粋な「実力」では参加32ヶ国中31位(北朝鮮が最下位)。実際のシミュレーションにいたっては、3戦全敗だそうです。
ともかく、開幕は6月11日。がんばれ日本!

posted by としゆき at 21:19| 東京 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月07日

誤発注?

いつものように朝起きてテレビ東京のモーニング・サテライトをつけると…アメリカ市場は大変なことになっていた。うつらうつらしながらニュースを聞いていると、「外国為替市場では円高が進み…」(うんうん、93円ちょっと位だった…)「一時、87円台に突入…」(えっ、87円台?)と言うところで、ぱっと飛び上がってしまった。

ダウ平均も一時期1000ドル近い暴落をし、そこから348ドル安まで急反発して引けている。この1000ドル近い大暴落直前は300ドル安くらいだったから、「何か」が起こったに違いない。様々な報道がなされているが、どうも日本でもかつてあった誤発注ではないか、という説が出ている。一説には"million"と"billion"を打ち間違えて、1000倍大きな注文をしてしまったとか何とか。金融市場ではmillionが単位となることが多く、たとえば為替でも100万ドル=USD 1millionを「1本」と言ったりする。英語でも、ドル紙幣のことをbucksと言うが、USD 10millionを"ten bucks"等とも言う。

で、誤発注があったのもシカゴの先物だという説もあれば、P&G株だという説もあり、いやいや複数銘柄だ、という話も出てきたりして、正直この時点ではまだ良く分からない。P&Gという社名がPI(I)GSのPortugal&Greeceを連想させたわけでもないだろうが、確かに株価の動きを見ると「何か」が起こっている。P&G株は一時、40%近くの暴落を起こした。

PandG.gif

ところが、別の銘柄でも問題が発生しており、たとえばアクセンチュアなんか一時99%も下落してたりする。

Accenture.gif

さらにさらに問題をややこしくすることに、NasdaqやNYSE(ニューヨーク証券取引所)が、あまりにも異常値で出会った取引は無効にすると宣言したことだ。これで、たとえば99%安で買っていた人が、50%安まで戻したところで売って利益確定し、結局30%安で終了したとする。このとき、前者のみが無効とされ、後者だけが有効になると、この人は49%分の収益だったはずが、20%分の損失(しかもまだポジションを閉じていない)になってしまう。この無効措置、かなり混乱を招くことが予想されるが、本日金曜日のニューヨーク市場はどうなるだろうか。

ところで余談だが、めざましテレビでニューヨーク特派員の佐野瑞樹アナがこのニュースを伝えていた。上記P&Gの件を伝えるとき、「ミリオン、一億単位を、ビリオン、一兆単位と間違えたのでは」云々等と何度も言っていたが、それはあくまで円換算すれば1ミリオン・ドル=100万ドル=約1億円弱、10ビリオン・ドル=100億ドル=約1兆円弱、と言うことであって、ドルの単位じゃないよ、と言うことが気になった。相変わらずの棒読み口調で、分かってるのかな?とやや不安になってしまう佐野アナ、バラエティでは好きだっただけに、ニューヨークでも頑張れ。
posted by としゆき at 20:18| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月05日

リーマン関連いくつか

いまさらながら、と言ってはなんだが、2008年9月15日に破綻したリーマン・ブラザーズ関係の話。

まず、BBCが作成したドキュメンタリー「リーマン・ブラザーズ 最後の4日間」を見た。CEOであったディック・ファルドを中心に描き、ニューヨーク連銀で開催された、各投資銀行による最後の救済会議等が語られる。それぞれの役に「そっくりさん」を配置していて、見ていてもなかなか面白い。ジェームズ・クロムウェルによる、時の財務長官ヘンリー・ポールソンなんか、非常にはまり役。連銀総裁として登場する現財務長官、ティモシー・ガイトナーが非常に小粒に見えてしまう。

リーマンの最後を横目に見ながら、メリル・リンチを(当初、リーマン買収の一番手と見なされていた)バンク・オブ・アメリカに売り渡し、会社と我が身の安泰を図ったジョン・セイン。CEO会議で、(意外にも?)救済策を纏め上げるべくリーダーシップを取るゴールドマン・サックスのロイド・ブランクフェイン等、救済会議のシーンがなかなか興味深い。「リーマンの次はメリル」と噂され、「我が社は大丈夫」と虚勢を張るセインに対し、ポールソンは「君が朝食に何を食べているかも、こちらでは把握している」と断言する。各社の財務内容を100%把握しているからこそ、現実を受け入れて知恵を絞れ…と語る彼に、米政府のサポートなしという条件で席を立とうとした参加者達も、議論を再開せずにはいられなかった。

最終的にリーマンの買い手と期待され、土壇場で降りたバークレイズ、そのCEOロバート・ダイアモンドは、名前だけ出てくるが姿を見せず。あくまでアメリカ側からの視点で描いた作品だからか、BBC製作だからなのか…。

そのポールソンを「悪役」として、リーマン日本法人代表だった立場から「リーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰か」を著したのが桂木明夫。1000億の売り上げ、100億の利益を誇りながら、日本のリーマンも本社のチャプター11申請の翌9月16日、民事再生法を申請する。これについては本書でも触れられているが、リーマン本社の保証付で調達した資金が多く、チャプター11に伴って期限の利益を喪失するためにそうせざるを得なかった由。いかに金融ビジネスが信用で成り立っているかが分かる。

本書は、リーマン関係者なら全員がそう思うのだろうが、ベアー・スターンズは救済しておきながら、なぜリーマンは違ったのか、という怨嗟で満ちている。そして、その決断を行ったポールソンへの恨み節でいっぱいだ。実際、リーマン破綻で混乱の極地に達して後は、AIG救済、ひいてはGMでも何でも救済…と際限がなくなっていく。であるなら、なぜリーマンだけが…と言う気持ちも分からなくはない(余談だが、中空麻奈「早わかりサブプライム不況」では、リーマンだけが海外の政府系ファンド等、「外資」が入っていなかったからだ、と示唆されている)。

ところで、本書の最後で著者が、リーマン本社が行っていたとされる不適切な会計処理に関して「もとより私が知るところではない」と述べているが、にわかには信じがたい。破綻前からリーマンが採っていたといわれる不適切なレポ取引(俗に「レポ105」と呼ばれる)の噂は出ていたし、元リーマン関係者からも耳にした事がある。であるならば、東京トップが「知らなかった」では済まされない。

同様に、アメリカ本社のインサイダーとしてリーマン破綻時を描いたのが、ローレンス・マクドナルド、パトリック・ロビンソン共著の「リーマン・ブラザーズはなぜ暴走したのか」。こちらは前掲「〜誰か」が友人でもあるディック・ファルドに同情的(その代わりにポールソンを叩いている訳だが)なのに対して、徹底的にファルドを槍玉に挙げている。著者の一人、マクドナルドはディストレスト部門に属し、大規模な空売りで収益を上げていた。だからこそリーマンの内情をよく見抜き、ファルドら経営陣に不動産関係のリスク削減を提案していたのだが、そうした提案が受け入れられる事はなかった。

この本はリーマン終幕劇のインサイダー物としても面白いが、空売りを絡めてデルタ航空等の破綻から収益を上げていくドラマとしても面白い。なかなかこの手のストーリーは外部には聞こえてこないからだ。空売りは特に株式市場では目の敵にされることが多いし、「〜誰か」でもリーマン株を空売りする「投機筋」をあげつらっている。ただ、相対取引中心の債券系では「空売り」がなければそもそも市場が成り立たないし、「空売り」によって今次信用危機を切り抜けた人たちも存在する。もっとも、かつてはサブプライム関連の「空売り」で莫大な利益を上げて英雄視されたポールソン・ファンドとゴールドマンが米議会で槍玉に上がっている昨今だが(ポールソン・ファンドのジョン・ポールソンが、ヘンリー・ポールソンの代わりに財務長官であれば…なんて声さえ聞かれたのに)。

リーマン関係の書籍も一巡したところなので、あの「ライアーズ・ポーカー」のマイケル・ルイスの新作、"The Big Short"の邦訳が早く出ないかな。
posted by としゆき at 17:21| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月01日

ポンド大暴落

以前、『新興国十把ひとからげ』で、"PI(I)GS"と言う表現について書いた。金融危機以後、財政リスクが高まった国を並べた造語だが、最近はまた別の"STUPID"と言う言い方もある。スペイン、トルコ、イギリス(UK)、ポルトガル、イタリア、ドバイの事で、"PIGS"(豚)と同様、差別的というか侮蔑的というか、そういう表現ばかりで食傷気味なのだが、この"STUPID"、よく出来ているのはUKことイギリスが入っている事だ。

公的資金を注入され、死に体状態の英銀がゴロゴロしているわけだが、イギリスの傷み方は実はもっと深刻なのでは?という憶測も流れ、外国為替市場ではポンドが売られ続けている。

そんな中、本日決算を発表した英銀HSBCホールディングスのCEOが、自分のボーナスを慈善事業に寄付するとサンデー・タイムズ紙が報じた。Bloombergによると、

HSBCbefore.gif

400万ポンドの寄付か、まあ、それくらいしないと納税者が納得しない…って、邦貨で5兆4000億円!?もちろん、何をどう計算してもそんな金額になるわけもなく、と言うか、いくらウォール街やシティが高額報酬で知られるからと言って、兆円単位はないだろう。と思っていたら、ちゃんとその後訂正されていた(当たり前だが)。

HSBCafter.gif

と言うわけで、ポンド円はほんの数時間のうちに、1ポンド=135万円から135円へと"STUPID"の名に恥じない(?)大暴落をしてしまったのだった。

まあ単純なミスなのだからそんなに目くじらを立てなくても良いのだが、翻訳者は訳しているときに兆円は幾ら何でもおかしいと感じなかったのだろうか?と言う話を会社でしていたら、「兆円単位もおかしいけど、ボーナスが億円単位なんてのも既におかしくて、訳がわからなくなったのかもよ…」と言う説が。ごもっとも。
posted by としゆき at 21:48| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月02日

影のMPC

イギリスには「影の内閣(Shadow Cabinet)」というものがある。議院内閣制のかの国では、もちろん時の政権与党が内閣を構成するが、一方で野党側も将来の政権交代に備えて、各省庁に対応した責任者を置いて政策議論を進める。政権交代時には原則としてそのまま閣僚になる。先の総選挙で政権党となった日本の民主党にも同様な制度があり、こちらは「次の内閣(Next Cabinet)」と呼ばれている。もっとも実際の組閣の際には全然違うメンバーが選ばれたりして、一体何のための仕組みなのか分からないのだが、まあ、それはさておき。

さて、日本の日銀にあたるのがイギリスのBank of England (BOE)だが、BOEが金融政策を議論する場が金融政策委員会、Monetary Policy Comittee (MPC)だ。各国中央銀行も同様な枠組みを持ち、金融市場はその一挙手一投足に目を凝らしている。たとえば本日のReserve Bank of Australia (RBA)みたいに、市場が既に織り込んでいた利上げをスキップしたりすると(3.75%から4%への利上げが予想されていたが、RBAは金利を据え置いた)、いきなり外為市場で豪ドルが売られたり、債券・スワップ市場で中短期の金利が急激に低下したりする。で、そのBOE MPCだが、何とこちらにも「影のMPC」が存在するのだ。

中央銀行は政府からは独立しているはずだから、政権交代が起こったからといって中銀組織がすぐに変わるわけではない。実際、先ごろブッシュ政権下で米連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名されたバーナンキは、本人も共和党員ながら民主党が多数を占める議会によって再任されている。もっとも、史上最多の反対票を集めたり、日本でも武藤副総裁(当時)の総裁就任が時の野党であった民主党によって葬られるなど、100%政治からフリー・ハンドと言うわけには行かないのだろうが。

だから、この影のMPCも別に現在野党の保守党が組織してる訳でもなんでもなく、一体何なのかと言うと、イギリスの経済問題研究所が市中のエコノミストを集め、実際のMPCよろしく(擬似)金融政策を議論する場だと言う。結果はタイムズ紙に報じられる。昨日もこの影のMPCで評決が割れ、4日に発表される本物のMPCの結果に対する不透明感が増している…等と言う報道があったりした。

もっとも、同僚の英国債トレーダーに言わせれば、"The BOE doesn't care at all about this shadow MPC."なのだそうだが。
posted by としゆき at 22:19| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月29日

ユーロの恩寵

前回の日記で「ユーロには加盟ルールはあっても離脱ルールはない」等と書いてしまった(『新興国十把ひとからげ』参照)が、何と実はユーロ参加国の通貨統合からの離脱についてのルールが存在していた。不勉強で間違った事を書いてしまって反省。

第一生命経済研究所の田中理・主任エコノミストによる「ギリシャ:”ユーロ離脱”という選択肢」と題されたレポートによると、昨年12月1日に発効したリスボン条約第50条に明文規定が存在すると言う。それによると、加盟国は欧州連合からの脱退を決意する事ができ、欧州理事会に諮り、欧州議会の同意後、欧州理事会が決議する事になる。このレポートでは、(1)欧州連合の離脱とユーロ離脱が同義か?、(2)加盟国側の一方的な離脱が認められるか?、(2)他の加盟国による強制的な離脱が認めれるか?、を論じている。結論としては、(1)欧州連合からの離脱は自動的に通貨統合からの離脱を意味する、(2)(3)一方的な離脱も、離脱の強制も原則として認められない、となる。

実際にギリシャがユーロを捨てるとしても、既に数多く存在するユーロ建ての契約関係を含め、そのコストと労力は膨大なものになる…としている。また、ギリシャにとっても、ユーロによる対外的な信用の傘に守られる方を選ぶのではないか?と結論付けている。

市場ではユーロ国債が徹底的に売り崩されているが、ユーロ圏の国債で指標となっているドイツ国債との利回り格差を見てみると次の図のようになる。

GDBRvsGGGB.jpg

リーマン・ショック後に300bps(basis points、1bpは0.01%)程度まで拡がるも、持ち直しつつあったギリシャ国債だが、ここに来て400bps差まで売られてしまっている。利回りの絶対値を見てみると分かるように、ドイツ国債は非常に安定している中、ギリシャ国債の一人負け状態だ。

GDBRvsGGGB2.jpg

ちなみに、欧州圏の国債の中では、ドイツ国債こそが最も中心的な存在であり、先物もドイツ国債先物が指標となる。その他の国はperipheral(周縁国)等と呼ばれたりする。

ギリシャ国債と、前回も名をあげたイタリア国債の対ドイツ国債利回り格差について、もう少し長い目でユーロが正式に導入された99年1月を含むようにして金利格差を見てみると、次の図の様になる。

GDBRvsGGGB3.jpg

GDBRvsGBTPGR.jpg

まさにユーロ様々であり、両国共にドイツ国債への収斂により、支払い金利の著しい低下を見たのであった(ちなみにイタリア国債のこの収斂に対して大規模な賭けを行ったのが、あのLTCMだ)。この図を見ると、いかに足元のギリシャ国債の動きが激しいかが良く分かる。外国為替市場でもユーロにじわりじわりと売り圧力が増している。本日も春頃までにギリシャ救済スキームが決まるのではと言った報道がなされていたりしたが、僕達はもう一度ドラクマだのリラだのを見る日が来るのだろうか?
posted by としゆき at 21:28| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする