2006年09月11日

イサクとイシュマエル

今日は9月11日、世界を震撼させた同時多発テロから5年。当時、会社の研修でロンドンに滞在していたが、授業開始と同時に講師が「この中で、家族がアメリカ政府関係者の人はいるか?」と質問を始めた。普段は軽妙な口調で研修を盛り上げていたそのフランス人講師は、「今、ペンタゴンが炎上している。」と語り始めた。

いささかブラックではあるが、その突然の切り出しに、いつものごとくどんなジョークを始めるのか…と聞いていた研修生の顔からも、「ワールドトレードセンターからも白煙が昇っている」「本日の研修は中止にするので、各自自宅待機して欲しい」と続く言葉に、次第に笑顔が消えていった。

会場近くのアパートに住む同期の家に皆で集まり、CNNの速報をじっと見つめる。余りの出来事に言葉もなく、理解するのに時間がかかったのを覚えている。当時滞在していたのは、マーブルアーチ駅近くのアパート。ロンドン市内でもアラブ系住人が多く、中東料理レストランやアラビア語の看板など、ちょっとしたアラブ人街を構成していた。そうした地区に住む研修生を引っ越させようという動きがあったという話もあとで聞いたが、意外に冷静な生活が続いたのは、あくまで「海の向こう」の出来事だったからだろうか。

9・11では多くの人が犠牲になっている。金融業界でも、ワールドトレードセンターにオフィスを構えていたキャンター・フィッツジェラルド社の被害は甚大だった。米国債のブローキングでは7割のシェアを誇る最大手の同社だが、一瞬にして700人近い社員を失い、壊滅的打撃を受けた。今でも同社は9月11日をチャリティーデーとしており、当日の取引手数料全額を遺族用の基金に寄贈している。

テロ直後、アメリカのテレビドラマ「サード・ウォッチ」や、ここでも何度か採り上げた「ザ・ホワイトハウス」は、特別エピソードを作成しており、本日、ケーブルテレビのSuper!drama TVでも放映されていた。

普段の「サード・ウォッチ」は、ニューヨーク市警本部(NYPD)やニューヨーク市消防局(FDNY)の活躍を描いた作品だが、実際に現場で懸命の消火・救援活動に当たった警官や消防士達のインタビューからなる「彼ら自身の言葉で」が放映された。プロとして、淡々と9・11当日の様子を語るその言葉は、余りにも重い。

また「ザ・ホワイトハウス」は米大統領とそのスタッフ達を描いた作品だが、普段とはやや毛色を変えて、何故テロは起こるのか?なぜテロは亡くならないのか?と問う学生の質問に答えようとするスタッフを描いた「イサクとイシュマエル」を放映してた。日本ではNHKが放映しなかったせいでお蔵入りとなっており、第3シーズンのDVDに特別収録されたエピソードだが、聖書のエピソードに拠りながら、対立の起源を語る。

テロの始まりは何かと問う学生に、大統領夫人は、イサクとイシュマエルのエピソードを語る。聖書に登場するアブラハムには長らく子供が生まれず、メードとの間に子供(イシュマエル)をなす。ところがその後、正妻サラは念願の子供(イサク)を授かり、イシュマエル母子を追放するに至る。「これが始まり。イサクの子孫がユダヤ人。イシュマエルの子孫がアラブ人…でも忘れてならないのは、この息子二人が一緒に父親を埋葬したこと」。そして次席補佐官ジョシュ・ライマンはこうも付け加える。「その出来事があったのは7300万年前だ…ここは複合社会だ…思想は1つじゃない。広く受け入れよう」。

いかにもアメリカ的な論理であり、ややもすると独善的にも聞こえるが、実際に「対テロ戦争」当事国として、自分達の言葉で、自分達の考えを語れるのがアメリカの強さなのだろう。果たして日本が同じ立場にあったとき、そこまでの「覚悟」を決められるのか、いささか心許ない。やはり、日本人にとっても「海の向こう」の出来事にしか感じられないのだろうか。
posted by としゆき at 21:09| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(1) | テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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