2012年08月14日

沈まぬ太陽

今更ながら映画「沈まぬ太陽」を見た。お正月にケーブルテレビで放映していたのを録画してあったのだが、いかんせん約3時間半と長い映画なので今まで見られずにいたのだ。しかし、あの御巣鷹山の日航機墜落事故は1985年8月12日。ニュース番組でこの事故が取り上げられていた事もあったので、やっと見てみる事に。途中10分間のインターミッションを挟んで前後半に別れているから、2日間に分けて観賞。

労働組合委員長として経営陣と敵対し、首相フライトにストをぶつける強硬手段からパキスタン、イラン、そしてケニアへと左遷される主人公、恩地元(はじめ)。母親の死に目にもあえず、組合活動の事から娘の縁談すら破談になりかける。それでも信念を曲げず、会社を辞める事も(会社に求められるように)転向する事もなく、ひたすら耐え忍ぶ生活が続く。一方、組合では仲間であったはずの行天四郎は、経営側へと寝がえり、出世街道を驀進していく。会社のため(そしてひいては自らの出世のため)には、金や女を駆使する汚い手段も厭わない行天のヒールっぷりが、恩地の頑固一徹ぶりと鮮やかに対比される。

海外僻地勤務を経て、日本に戻ったところに国民航空(≒日航)123便の事故が発生。遺族の世話係として奔走する恩地、そして航空利権を巡る永田町の思惑から送りこまれた新会長・国見の下、会長室所属となった恩地は長期為替予約やホテル買収での不明朗会計を追求していく。ところが、永田町の政治力学から、首相の利根川から三顧の礼を持って迎えられたはずの国見も梯子を外され、経営改革も道半ば、関西で遺族担当に復帰するはずだった恩地も行天の策略で再度ケニアに飛ばされる。それでもアフリカの大地で大自然と向き合う恩地、一方行天のところには、東京地検特捜部がやって来るのだった。

ちなみに最後にほんの少ししか登場しないが、地検検事役の上川隆也が良い味を出してる。「沈まぬ太陽」と同じく山崎豊子原作のNHKドラマ「大地の子」でもいい味出してたな〜等と思い出す。他にも、恩地の妻りつ子役の鈴木京香とか、遺族役の宇津井健とか、いい役者が沢山出てて贅沢な配役。

原作は読んだことがないのだが、映画版は前半の重厚さに較べると、後半はやや散漫となった印象が否めない。恩地、行天が絡んで行く人間ドラマ色が強かった前半に対して、後半は国民航空を取り巻く複雑な環境(特に永田町からの視点)が、短い時間ではきちんと描写し切れなかった感も。

映画後半、放漫経営の象徴として出てきた長期為替予約とホテル買収も、後者はともかく、前者に至っては「なんとなく悪い事をしているらしい」と言った印象だけでストーリーが進む。長期為替予約は、文字通り長期間の外国為替変動リスクをヘッジする手段であり、その後の相場が逆方向に動いたからと言って責められる筋合いのものでは全くない。ヘッジ取引でうまく行った場合は何も言わず、損を出した場合(ヘッジなのだから、損も得も本来ないのだが)だけ大騒ぎするという、日本人の(あるいは原作者の?)金融音痴ぶりが感じられて、ここは少し興ざめ。

「沈まぬ太陽」の原作連載時や、映画化の企画に対しては、日航が猛抗議したものの、日航本体の経営が傾く中で映画化された。巨悪・日航の影響力が低下した中での快挙…と見る向きも多いかもしれないが、果たして本当に山崎視点、恩地(あるいはそのモデルと言われる小倉寛太郎)中心主義が「正しい」物なのかどうかは議論が分かれるようだ。それを判断するだけの材料は僕は持ち合わせていないが、こんな文章も世の中にはある。

『小説「沈まぬ太陽」余話(III)』

この話の真偽はともかく、労働組合とかストとかにアレルギーのある僕には、余りにも主人公をヒーロー視し過ぎているとは思う。親方の日の丸の経営陣にも問題があったかもしれないが、御巣鷹山の事故があっても、結局自分勝手好き勝手に非生産的な組合活動を続け、結局は会社を破綻させた責任の一端は労働者側にもあるだろう。行天によるマスコミや役人の懐柔工作が余りにも古臭くて「昭和」を感じさせるものだったのは滑稽だが、40年ほど前にはこんな暴力的な輩が跳梁跋扈していたのかと思うと、本当に隔世の感がある。

ところで、日航123便の事故の話をすると、いつも思い出すのは、極限状況下でも必死に機体をコントロールし続けた機長たちの、生々しいやりとりが残されたボイスレコーダー。

JAL123便フラッシュ

子供のころ、夜に流れた事故のニュースもそうだが、夏休みお昼の恒例、「笑っていいとも!」を見ていたら生存者発見の一報が入り、その日の午後ずっと御巣鷹山からの生中継を見ていた事を思い出す。あれから27年。すでに事故当時には生まれていなかった後輩たちも入社してきているが、今後はこのような航空事故の起きない事を願う。

posted by としゆき at 23:52| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月02日

ヴォワ・ラクテ

虎ノ門に智美術館という陶芸の美術館がある。ホームページによると、

『菊池寛実記念 智美術館(きくちかんじつきねん ともびじゅつかん)は、現代陶芸のコレクターである菊池智(とも)が長年にわたり蒐集してきた現代陶芸のコレクションの一般公開、関連事業による現代陶芸の普及、および陶芸作家や研究者の育成を目的とし、2003年4月に東京・虎ノ門に開館いたしました。』

という事らしい(美術館のホームページはこちら)。

本日、初めて訪れてみた…のだが、行ったのは美術館の方ではなくて付設のフランス料理レストラン、「ヴォワ・ラクテ」。ガラス越しに日本庭園が見えて、今日みたいな天気のいい日は非常にいい気分でランチが楽しめる。近くにあるホテルオークラも中庭で有名だが、都心のど真ん中に、こんな素敵な隠れ家が…とちょっと嬉しくなる。レストランは近くで働いている人にも人気らしく、開店時間の11時半頃に予約せずに行ったら、窓際のテーブルは全部取られていた。12時頃にはほぼ満席。

実は大学院時代の宇宙論の恩師を神谷町に訪ねて行ってランチをご一緒したのだが、チリに新しく出来る望遠鏡とか、天文の話でも盛り上がっていた。会社のオフィスに戻ってこのレストランについて調べて初めて知ったのだが、店名の「ヴォワ・ラクテ」というのは、フランス語で「天の川」という意味らしい(voie lactée)。今日の会話にも「天の川」って単語出て来てたよ!と一人でちょっと盛り上がる。

ラクテはラクトース(乳糖)じゃないけれど、ミルクだろうから、英語のmilky wayみたいなものかと思って調べたら、フランス語で「乳の道」だそうで。ついでにドイツ語ではMilchstraßeだし、イタリア語ではvia latteaらしいので、この辺りの言語では同じ表現なんだね。

『ディナータイムは天の川を思わせる光りが天井に瞬き、幻想的な空間の中を演出します。素敵な庭園と星空を眺めながら、ディナーやパーティーはいかがでしょう。』

という事なので、夜の時間にも是非訪れてみたい。あ、でもその時はホットミルクじゃなくて、是非お料理に合うワインでも。
posted by としゆき at 23:02| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お食事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする