2011年05月15日

原発あれこれ

未だに状態が落ち着かず、どちらかと言うと悪いニュースが出てくる事が多い福島第一原発。現場や政府、東京電力の混乱振りは見ていても歯がゆいが、東電・メーカーを始め、サポートに訪れた海外からのエンジニア達による早い解決を信じたい。

地震の後、原発に関する情報が溢れ、相当数の日本人がベクレルだのシーベルトだのといった単位や、原発の構造について相当詳しくなったのではないだろうか。今回の事故は残念だが、科学リテラシーに劣る事が多い日本人、これをいい機会に今後に向けて関心を高めていければとも思う。

さて、原発と聞いてとりあえず我が家にあった本でも読んでもみようと思ったら、最初に目に付いたのがゴルゴ13の「2万5千年の荒野」。いや、冗談ではなく、120ページを超えるこの作品(文庫版55巻収録)は、今読んでもなかなかに力作なのだ。

ロサンゼルス五輪開会に向けて通常運転を急ぐヤーマス原発。しかしスタッフの過労から機械操作ミスも起こり、排気弁にトラブルを抱える。記念パーティー当日に原発は暴走を始め、最後はゴルゴによるパイプ狙撃によって最悪の事態を逃れる。外部電源喪失、原子炉建屋、ECCS(緊急冷却装置)、冷却水喪失、炉心棒溶融、水素爆発…と、どこかで聞いた話のオンパレード。この物語でも技師達はゴルゴと共に必死の回復活動に従事する。題名の2万5千年はプルトニウムの半減期だが、実際には2万4千年のようだ。事故直後にこの話を読み直し、報道ではヨウ素131(半減期8.1日)やセシウム137(同30年)ばかり取り上げられて、プルトニウムが出てこないなぁと思っていたものだった。

続いて読んだのは高村薫の「神の火」。『原発技術者だったかつて、極秘情報をソヴィエトに流していた島田』は、『CIA・KGB・北朝鮮情報部・日本公安警察』の諜報戦に巻き込まれ、『プランなき「原発襲撃」へと動き出した−。完璧な防御網を突破して、現代の神殿の奥深く、静かに燃えるプロメテウスの火を、彼らは解き放つことができるか?』(文庫版後表紙より)。ミステリーとしても秀作なのだが、以前読んだときにはいま一つイメージできなかった原発襲撃の場面描写が、今となってはひどく具体的に頭に浮かぶ。

ところで「神の火」もそうだし、今回の事故でもそうだが、「原発って、意外に現場(近く)にいられるんだ?」と思った人は多いのではないだろうか?現に今でも多くの人が福島第一原発に滞在しているし、以前だったら放射線のベント(排気)なんてとんでもない大事件だったはずなのだが、「ただちに健康に被害は出ない」のであれば、最悪の事態に繋がるよりは仕方がない…と思ったりもする。元々日本人は安全性についてゼロかイチかのデジタルでしか判断しない(出来ない)傾向があるので、もっとこうした部分について議論が深まるとよいと思う。

そして、本来4月放映予定だったはずなのだが、何故か5月に延期されたNHKの「BS世界のドキュメンタリー」、チェルノブイリ事故を扱った3作品「永遠のチェルノブイリ」、「被曝の森」、「見えない敵」。1986年4月26日に起きた悪名高きチェルノブイリ(ニガヨモギの意)原発事故。石棺と言う言葉も有名になったが、対処しきれず、とりあえずコンクリートで覆ってしまった原発も、25年が経ち更なる工事が必要とされている。チェルノブイリ跡地なんて人っ子一人入れないのかと思いきや、今では見学ツアーがあったり、これまたエンジニア達は近くの町から日参している。石棺内部の写真も放映されていたが、福島第一でも起こっていると言われる炉心溶融で、ウラン燃料がドロドロに溶けて固まっている物が映し出されていた。表面こそ固まっているものの、内部はどうなっているのか分からず、再臨界が起こっていた事もあると言う。さらに完全に固まっても、時間と共に風化が進み、危険な放射性物質が飛散する恐れがある。

事故を起こしたのは4号炉なのだが、2000年に3号炉が停止するまで、残った炉が発電に使われていたと言うのは衝撃だった。ソ連国内の電力不足対策だと言う。大事故を起こして石棺化したそのすぐ横で原発を運転し続けると言うのは、さすが旧ソ連というか何と言うか…。財政難にあえぐウクライナは、外貨獲得のために原発を新たに建造して、反原発の機運が高まるヨーロッパ各国に電力を輸出する考えだと言う。原発に頼りきり、頼り続けざるを得なかった福島の状況とも重なって見える。

また「被曝の森」では、人がいなくなり、ジャングル化した周辺地域には野生の動物が入り込み、さながら自然の楽園状態となっている。森の中のマウスを調べたところ、放射線によるフリーラジカルを抑制する機能が向上し、放射線障害が全く見られない(ある意味、進化した)と言う。一方で、ツバメを調べたところ、フリーラジカルに対抗するため抗酸化機能をフル稼働し続け、力尽きて倒れていると言う。世代交代のスピードが全然違うので生物学的に人類がこの状況に対応するよう進化するのは期待すべくもないが、こうした動物の研究を通じて、何らかの対策が発見されるのを期待したい。

そして最後に、先日届いた「ザ・ホワイトハウス」最終第7シーズンのDVDボックス。大統領選挙キャンペーンを描く今シーズンで、最初支持率でリードしたのはアーノルド・ヴィニック上院議員(カリフォルニア州、共和党)。ところが討論会で原子力発電について肯定的な意見を述べた直後、彼が導入を主導したサンアンドレア原発がメルトダウン事故。これをきっかけに支持率でマット・サントス下院議員(カリフォルニア、民主党)に並ばれ、最後にはネバダ州を落とし大統領選に敗れると言うストーリー(と言うか、民主党側の視点から描いた作品なのだけど)。NRC(原子力規制委員会)も登場、安全弁を動かすため、悩みながらも現場のエンジニア二人に出動する指令を下す大統領(うち一人はその後命を落とす)、事故15分後には全米に向けてテレビ演説を断行、指導力を見せるホワイトハウス等、今回の日本政府と較べながらいろいろと考えてしまった。

ちなみに「BS世界のドキュメンタリー」では、16〜18日にシリーズ「放射性廃棄物はどこへ」を放映。意見の分かれる原発だが、自分の考えをまとめる前に正しい知識を身に付けておきたい。興味のある方は是非どうぞ。
posted by としゆき at 20:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月08日

クーザ

連休中に原宿ビッグトップで「KOOZA(クーザ)」を鑑賞してきた。地震の後暫く休演していたみたいだが、ゴールデンウィークに向けて復活。シルク・ドゥ・ソレイユ(フランス語で「太陽のサーカス」)の公演作品だが、見に行ったのはこの作品が始めて。思ったよりも小さいかな?と思う会場だったが、舞台を身近に感じられるからこれくらいの方がいいのかも。

開演前から、客席を道化師達が歩き回り、あちこちで観客にちょっかいを出している。ポップコーンを(文字通り)ばら撒いてたり、風船細工で小さな子供の興味を引いたり。騒ぎを起こす道化師を警察官(役)が追いかけて捕まえるのだが、賄賂を渡されて見逃してたりと芸が細かい。この賄賂のドル(?)札は近くの席の観客に手渡されていた(これはちょっと羨ましい)。

クーザの世界に迷い込んだイノセントを、トリックスターが導きながら様々な演目を展開していく。会場に「本日の公演内容」みいたいなポスターが張ってあるのだが、演目が「シャリバリ」だの「コントーション」だの、パンフレットがないと何のことか分からず。ちなみにパンフレットと当日の公演を見比べると、「ピックポケット」と言う演目がなかったようだ。ちょっと残念。

基本的にはサーカスの伝統的な演目に、歌と踊りとをミックスして演出している。上海雑技団の様な軟体パフォーマンス、空中ブランコ、ジャグリング等もあるが、像とかトラとかは出てこない。ナイフ投げこそないものの、マジックのコーナーはあり、王様を含む道化師3人が進行。観客席から選んだ人をステージに上げて、思いっきりダンスさせたり、マジックで消してしまったり。最初に呼ばれた男性はノリノリで自分から踊りまくり、ステップ踏みまくりで観客席からも大喝采。その後を受けた二人目の女性は恥ずかしがっててかわいそうだったが、早々に入れ替わりで消えてしまったのは不幸中の幸いか。

ちなみにこの女性が消えた後の演目、「ホイール・オブ・デス」がかなりの出来栄え。二つの金属の輪が繋げられて天井から吊り下げられ、その輪を二人の人間が人力でぐるぐる回していく。最初は輪の中をモルモットの様に走って回していたのだが、途中から輪の外側に乗って回したり、天頂を過ぎて下りに入る部分で輪からジャンプして、輪が回転して下がって行く分、着地までの距離が増えると言うのが見ていても怖い。さらには縄跳びを始めたり、これは本当に手に汗握るのでおススメ。

そして観客がこの「ホイール・オブ・デス」に圧倒されてやんやの拍手をしていると、突然ステージの穴から先程の女性が帰還。大爆笑と大拍手なのだが、この女性は「ホイール・オブ・デス」を楽しめなかったのだろうか?どこか特等席で見ていたと信じたいが…。

また、Cブロックのとある座席に座ると、ステージに呼ばれなくてもサプライズがあって楽しいので、チケットを買うときにはおススメ…と書こうと思ったのだが、ネット上の情報では、上記の消える女性共々、関係者で観客じゃない説もあるので敢えて席番は書かない。事情を知っている方は教えて下さい。

シルク・ドゥ・ソレイユは初めてだったが、とっても楽しめたので、今後も是非見に行きたい。
posted by としゆき at 20:49| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする