2010年01月29日

ユーロの恩寵

前回の日記で「ユーロには加盟ルールはあっても離脱ルールはない」等と書いてしまった(『新興国十把ひとからげ』参照)が、何と実はユーロ参加国の通貨統合からの離脱についてのルールが存在していた。不勉強で間違った事を書いてしまって反省。

第一生命経済研究所の田中理・主任エコノミストによる「ギリシャ:”ユーロ離脱”という選択肢」と題されたレポートによると、昨年12月1日に発効したリスボン条約第50条に明文規定が存在すると言う。それによると、加盟国は欧州連合からの脱退を決意する事ができ、欧州理事会に諮り、欧州議会の同意後、欧州理事会が決議する事になる。このレポートでは、(1)欧州連合の離脱とユーロ離脱が同義か?、(2)加盟国側の一方的な離脱が認められるか?、(2)他の加盟国による強制的な離脱が認めれるか?、を論じている。結論としては、(1)欧州連合からの離脱は自動的に通貨統合からの離脱を意味する、(2)(3)一方的な離脱も、離脱の強制も原則として認められない、となる。

実際にギリシャがユーロを捨てるとしても、既に数多く存在するユーロ建ての契約関係を含め、そのコストと労力は膨大なものになる…としている。また、ギリシャにとっても、ユーロによる対外的な信用の傘に守られる方を選ぶのではないか?と結論付けている。

市場ではユーロ国債が徹底的に売り崩されているが、ユーロ圏の国債で指標となっているドイツ国債との利回り格差を見てみると次の図のようになる。

GDBRvsGGGB.jpg

リーマン・ショック後に300bps(basis points、1bpは0.01%)程度まで拡がるも、持ち直しつつあったギリシャ国債だが、ここに来て400bps差まで売られてしまっている。利回りの絶対値を見てみると分かるように、ドイツ国債は非常に安定している中、ギリシャ国債の一人負け状態だ。

GDBRvsGGGB2.jpg

ちなみに、欧州圏の国債の中では、ドイツ国債こそが最も中心的な存在であり、先物もドイツ国債先物が指標となる。その他の国はperipheral(周縁国)等と呼ばれたりする。

ギリシャ国債と、前回も名をあげたイタリア国債の対ドイツ国債利回り格差について、もう少し長い目でユーロが正式に導入された99年1月を含むようにして金利格差を見てみると、次の図の様になる。

GDBRvsGGGB3.jpg

GDBRvsGBTPGR.jpg

まさにユーロ様々であり、両国共にドイツ国債への収斂により、支払い金利の著しい低下を見たのであった(ちなみにイタリア国債のこの収斂に対して大規模な賭けを行ったのが、あのLTCMだ)。この図を見ると、いかに足元のギリシャ国債の動きが激しいかが良く分かる。外国為替市場でもユーロにじわりじわりと売り圧力が増している。本日も春頃までにギリシャ救済スキームが決まるのではと言った報道がなされていたりしたが、僕達はもう一度ドラクマだのリラだのを見る日が来るのだろうか?
posted by としゆき at 21:28| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月22日

新興国十把ひとからげ

最近、ギリシャ財政についてのニュースが喧しい。ユーロ採用国でもあるので、ユーロ初の落伍者が出るのでは…と言う思惑もあって、外為相場でユーロが売られている。もっとも、ユーロには加盟ルールはあっても離脱ルールはないので、今すぐギリシャがどうこうと言う事もないとは思うが。

かつてユーロの落ちこぼれと言えば間違いなくイタリアだった。そのイタリアも含め、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインの南欧諸国は十把ひとからげにその頭文字から"PIGS"と呼ばれている。またこの「豚」を連想させる命名が差別的だという意見もあるが、蔑称なのは間違いないだろう。イタリアじゃなくても、金融立国を目指して国ごと破綻してしまったアイスランドとか、同じく金融危機に翻弄されるアイルランドとか、"I"には事欠かないようで、「豚」を避けるためにも"PIIGS"という言い方もある。

この"PIGS"、間違いなく一世を風靡した"BRICs"の二番煎じだ。ご存知"BRICs"と言えば、ブラジル、ロシア、インド、中国(チャイナ)の事で、2003年秋にゴールドマン・サックスの調査レポートで命名された。その後、経済面のみならず政治面でもこれらの国の台頭は目覚しく、さすがゴールドマンと言う気もしなくもないが、一方で新興国と大国の立場を都合よく使い分けるBRICsを苦々しく思う面々も少なからず。

ゴールドマンは続いて2005年末に、「ネクスト11」としてメキシコ、ナイジェリア、エジプト、トルコ、イラン、バングラデシュ、パキスタン、インドネシア、ベトナム、フィリピン、韓国の名前を挙げる。こちらは語呂も特に印象的ではないし、"BRICs"程には普及しなかった。

その後、タイ、インドネシア、フィリピンのTIPs(余談だが、アメリカの物価連動国債の通称がTIPS…インフレの危険がある国という訳ではないだろうが)だの、ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの"VISTA"だの、いろいろ出てきている。"VISTA"はWinddows効果でもないだろうが、そこそこ人口には膾炙した。これを命名したのが門倉貴史の、その名もBRICs経済研究所。ちなみに彼はマレーシア、エジプト、ドバイ、サウジアラビアからなる"MEDUSA"という造語も提案しているが、こちらは彼以外からは聞いた事がない。彼はいろいろキャッチーな内容の書籍を多数著しており、なかなか面白いのだが、その多くの著書の題名からかアングラ感が抜けないのが玉に瑕か。

実際に金融の現場で使われる事が多いのは、国名と言うよりも地域を表す"CEEMA"と"MENA"だろうか。前者は正式名称は色々あるようだが、基本的には"Central & Eastern Europe, Middle East and Africa"。後者は"Middle East and North Africa"。ドバイを始めとして中東は早くから話題だが、日本人にはなかなかアフリカへのイメージが沸かない。それでも、『アフリカ 動きだす9億人市場』と言う本が話題になったり、週刊東洋経済が1月9日号で「アフリカの衝撃」を特集したりと、徐々に注目度が高まっている感じがする。今や世界経済を牽引する勢いの中国に続くのは、どの新興国か?
posted by としゆき at 22:30| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月18日

音楽の正体

もうずっと以前、フジテレビの深夜番組の時間帯で「音楽の正体」と言う一風変わった番組が放映されていた。主にビートルズやユーミンの曲を題材にして、そうしたヒット曲の背後にある「音楽の正体」を考える…と言う趣旨だった。ここで音楽の正体といっているのは、いわゆる「クラシック音楽」に代表される西洋音楽の発展の中で積み上げられてきた音楽理論の事であり、ともすれば印象批評に陥りがちなポップス分析において、少し違った角度からの光を当てると言う、なかなか面白い企画だった記憶がある。

最近また、家でキーボードをちょこちょこ弾いて、とある曲を練習中なのだが(『Frohes neues Jahr!』で2007年の目標なんて書いておきながら、まだまだ継続中…)、この番組のことを思い出すに至りamazonのユーズド商品で購入してみた。近藤サトのナレーションで淡々と進む番組を思い出して懐かしくもあったが、いかんせん基礎知識がないので軽い文体の文章を読んで楽しんでいる程度だった。たとえば、典型的なトニック、ドミナント、サブドミナントの和音の絡みを、夫と妻と愛人の関係に喩えたり。会社の同僚は子供と一緒にこの本を読もうと思ったが、冒頭でいきなり愛人が出てくるものだから諦めたと言う。

その同僚が薦めてくれたのが『憂鬱と官能を教えた学校』と言う類書。本当は東大で行われたジャズ講義録である、『東京大学のアルバート・アイラー 東大ジャズ講義録』が面白いよ、と言う話だったのだが、『憂鬱〜』の方が先に出版されているので、こちらを先に読んでみる事にした。ちなみに著者の一人である菊地成孔は作家の菊池秀行の弟。僕自身は知らなかったが、別の知り合いに『憂鬱〜』を見せたところ、「あ、菊池君だ。」なんて反応していたので知っている人は知っている(のでしょう)。

で、この本もなかなか面白いのだが、やや定性的というか、博物学的というか、知らない人には何のことやら…と言う部分があり、寝転んで読み続けられなくなったところで一度休止。ギターを弾いたりした経験がないので、コードの話なんかが出てくると頭では分かっても「ふ〜ん」で終わってしまう。元々、音楽は数学の派生物(?)としてピタゴラス学派によって研究された、なんてエピソードはよく知られており、『憂鬱〜』が取り上げている、バークリー・メソッドと言う教育法は、音響工学なんかに基づいて教科書を書いているらしい。だったらいっそのこと、数学もしくは物理学の観点から(できれば日本語で、初心者にも分かりやすく)音楽理論を語ってるものはないか?と思って探して見つけたのが『音律と音階の科学 ドレミ…はどのようにして生まれたか』。西洋音楽の基本は管弦楽器、そして管弦楽の音といえば波動、波動と言えば物理学、と言うことで、簡単な物理学的考察から、たとえばなぜ音階はドレミ…になり、その中でもいわゆるI度の和音(ハ長調で言えばドミソ)が人間にとって心地よく聞こえる(「協和する」)のかが紹介されている。

『音律と音階の科学』とともに、芥川也寸志の『音楽の基礎』も読んでみたのだが、こちらもなかなか読みごたえがある。この本と、『音律〜』と『音楽の正体』を併せ読みすると理解も進みやすい。他の本には見られない作者の教養が溢れていて、この辺が岩波新書っぽい、といえばぽい。

それはさておき、まだまだ音楽理論は勉強中。『憂鬱〜』もちゃんと読み直したいし、『東京大学のアルバート・アイラー』も読んでみたい。あれ、肝心のピアノはどうなった?
posted by としゆき at 23:15| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月13日

メーカー回帰

今朝の日経新聞社会面に、『理系学生 メーカー回帰』という記事が掲載されていた。大学生の就職志望先企業ランキングについての記事で、「文系男子では三菱商事が4年連続の1位となり、トップ10を商社と金融大手が独占した。理系男子では東芝が初の1位となり、メーカー回帰が鮮明となった」…というもの。

理科系出身者として、メーカーが人気なのはうれしくもあるが、この記事はこう続ける…「一方、外資金融のディーラーなどの人気が低下した」。まあ、昨今の金融危機の中で、そうした動きもあるだろうが、ことさら「外資金融のディーラー」を狙い撃ちしなくても…とも思う。

『WEDGE』2009年7月号の記事によると、「リーマンショック後、外資系金融を希望する理系学生は著しく減ったたという。ではメーカー回帰が起きたかというとそうではない。理系優秀層は日系の金融、コンサル業界、さらには、この数年、投資事業への傾斜で理系採用を強化している商社に次々と囲い込まれている」と言う事だった。確かに就職活動でやってくる学生を見ていても、商社人気は高まっているようだ。コンサルは相変わらずの人気のようだし、邦銀を始め日系金融も底堅い。そんな中、メーカーの「復権」は注目だ。願わくば、理科系学生を安月給でこき使ってスポイルしてしまわない事を…。
posted by としゆき at 21:05| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | お仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月02日

天皇杯決勝

あけましておめでとうございます。

この年末年始は帰省もしないで東京の家にこもっている。暦の関係で休暇も4日しかなくて、シルバー・ウィークより短いのだ。さらに以前は12月30日の大納会、1月4日の大発会は、東京証券取引所が半ドンとなるため、午後は年越し蕎麦を食べに行ったり、神社にお参りしたり…と、少なくとも気分的にはのんびりしていたのだが、2009年末から全日営業。年末気分も余りなく、単なるロング・ウィークエンドみたくなってしまった。

そんなこんなで年も明けた2010年、今年初のイベントは国立競技場でのサッカー天皇杯決勝戦観戦。29日に行われた準決勝で、我らが名古屋グランパスは清水エスパルスをPK戦で退け、10年ぶりの決勝進出を決めていた。Jリーグ本戦ではいま一つ成績も振るわなかった(またぞろ「中位力」等と揶揄されそうだが…)ので、ここは天皇杯に勝って、気分よく新年を迎えたいところだ。

天皇杯決勝戦を見に行くのはこれが3回目。最初は1999年元日の第78回大会決勝。この年、天皇杯を最後にチーム消滅が決定していた横浜フリューゲルス。負けたらそこまで…のプレッシャーにも負けず、天皇杯優勝でチーム有終の美を飾ると言う、マンガみたいな出来すぎの結末を迎えた。

2回目は翌2000年元日の第79回大会。4年前の第75回大会に続いてグランパス対サンフレッチェ広島の顔合わせとなった決勝戦。ストイコビッチがゴール前でディフェンスをあざ笑うかのように華麗にかわし、サンフレッチェゴールにシュートを叩き込んだ伝説の試合。NHKの実況・解説が声をそろえて「凄い」と賞賛する名ゴールで2回目の優勝を飾った試合。

ちなみに75回大会は、名将ベンゲルがリーグ最下位から天皇杯優勝まで一気に持って行った、これまたサポーターにはたまらない優勝だったわけだが、残念ながらこちらは現場では観戦できなかった。

第79回天皇杯 ストイコビッチゴール2000年1月1日


さてさて、結果の方は…。

まあ、勝負は時の運。勝敗は平家の常。名古屋グランパス、天皇杯準優勝おめでとう。そしてガンバ大阪は、昨年に続く2連覇おめでとう。
posted by としゆき at 19:55| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする